労働基準関係法令違反に係る公表事案

2022年6月9日

厚生労働省では、労働基準関係法令の違反企業について企業名等を厚生労働省等のWEBサイトに掲載していますが、今回は、4月28日に掲載された「労働基準関係法令違反に係る公表事案」の内容をご紹介します。

掲載企業数は392社

令和3年4月1日~令和4年3月31日の1年間に労働基準関係法令違反に係る公表事案として企業名等が掲載された企業数は、全国の労働局合計で392社です。

労働局別に掲載企業数をカウントした結果は以下のとおりですが、掲載企業数が多い上位5つをみると、大阪労働局(30社)、東京労働局(27社)、愛知労働局(25社)、北海道労働局(21社)、神奈川労働局(18社)になっており、法人数が多い都道府県の労働局が上位に挙がっている状況がみられます。

労働安全衛生法違反が8割超

法令違反の内訳は、労働安全衛生法違反が全体の8割を超え(328企業、83.7%)、労働基準法違反(33企業、8.4%)及び最低賃金法違反(31企業、7.9%)が残りの2割弱になっています。

また、法令違反の事案概要は以下のとおりです。

労働安全衛生法違反の事案概要

(例)

  • 4日以上の休業を要する労働災害が発生したのに、遅滞なく、労働者死傷病報告書を提出しなかったもの(安衛法100条・安衛則97条違反)
  • 移動式クレーンを用いて作業を行うに当たり、クレーンの運転について合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなかったもの(安衛法20条・クレーン等安全規則71条違反)
  • フォークリフトを使用して荷の受入作業を行わせるにあたり、走行経路内に労働者を立ち入らせたもの(安衛法20条・安衛則151条の7違反)
  • 高さ2メートル以上の箇所で作業を行わせる際に、墜落防止措置を講じていなかったもの(安衛法21条・安衛則518条違反)

労働基準法違反の事案概要

(例)

  • 労働者2名に対し、労働条件について、書面を交付する等により明示しなかったもの(労基法15条違反)
  • 労働者2名に、2か月分の定期賃金約64万円を支払わなかったもの(労基法24条違反)
  • 有効な36協定の締結・届出なく時間外労働を行わせたもの(労基法32条違反)
  • 労働者7名に、7か月間の時間外労働の割増賃金合計約427万円を支払わなかったもの(労基法37条違反)

最低賃金法違反の事案概要

(例)

  • 労働者1名に、1か月分の定期賃金約23万円を支払わなかったもの(最賃法4条違反)
  • 労働者4名に、大阪府最低賃金額(1時間964円)以上の賃金を支払わなかったもの(最賃法4条違反)

*労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和4年4月28日掲載)

https://www.mhlw.go.jp/content/000798929.pdf

なお、労働基準関係法令違反に係る公表事案として、厚生労働省及び都道府県労働局のWEBサイトに一定期間企業名等が掲載されるのは、以下の事案になります。

送検事案(労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案)

局長指導事案(通達※に基づき、局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案)

※ここでいう「通達」とは、以下をさします。

「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)

「裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について」(平成31年1月25日付け基発0125第1号)

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

≪岩楯めぐみ氏の最近のコラム≫

※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

コラム一覧に戻る