任意継続被保険者の資格喪失要件追加など(2022年1月1日施行)

2022年1月26日

2022年(令和4年)1月1日から、健康保険の任意継続被保険者に関する取扱いが一部変わります。

任意継続被保険者とは

健康保険では、原則として適用事業所に使用される者を被保険者としていますが、例外として被保険者が退職して適用事業所に使用されなくなった後も、一定の要件(資格喪失日の前日までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があることなど)を満たす場合は、本人の選択により、最大2年間、引き続き退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができます。この制度における被保険者を「任意継続被保険者」といいます。

任意継続被保険者の保険料

任意継続被保険者の保険料は、以下の「①又は②のうちいずれか低い額」に保険料率を乗じた額になります。また、保険料率が変更されるなどの一部の場合を除き、任意継続被保険者の間は基本的には保険料は変更されません。なお、一般の被保険者の場合はその保険料の半額を事業主が負担しますが、任意継続被保険者の場合は事業主負担がなくなりますので全額被保険者負担になります。

①従前の標準報酬月額【退職時の標準報酬月額】

②全被保険者の平均の標準報酬月額(健保組合が当該平均した額の範囲内において規約で定めた額がある時は、その額)【平均の標準報酬月額】
※協会けんぽの場合の②は30万円(令和3年度)

新たに転職先の健康保険の被保険者になったり、家族に扶養されて被扶養者にならない場合は、退職後は市区長村が運営する国民健康保険に加入することになりますが、国民健康保険の保険料は、前年所得等を基準に保険料が算定されるため、退職して収入がないにも関わらず、高い保険料を負担しなければならないことがあります。

任意継続被保険者の保険料は、②の上限が定められていることなどにより国民健康保険の保険料よりも低額になることがあるため、退職後は、国民健康保険ではなく健康保険の任意継続被保険者となることを選択することも多くみられます。ただし、以下でご説明する資格喪失要件に該当しない限り、これまでは2年間は任意継続被保険者の資格を喪失することはできませんでした。

任意継続被保険者の資格喪失要件の追加等

任意継続被保険者は、改正前は以下のいずれかに該当するときに資格を喪失することとされていました。

  • ・任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき。
  • ・死亡したとき。
  • ・保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を納付期日までに納付しなかったとき(納付の遅延について正当な理由があると保険者が認めたときを除く。)。
  • ・被保険者、船員保険の被保険者、後期高齢者医療の被保険者等になったとき。

従って、例えば、家族が就職しその被扶養者になることができる場合や、前年所得がなくなって国民健康保険の保険料が低額になるため国民健康保険に移行したいと希望した場合であっても、上記のいずれにも該当しないため、これまでは2年間は任意継続被保険者の資格を喪失することができませんでした。

改正後は、被保険者の生活実態に応じた加入期間の短縮化を支援する観点から被保険者の任意脱退が認められ、以下の資格喪失要件が追加されたため、希望に応じて任意継続被保険者の資格を喪失できるようになりました。

  • ・任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき。

また、協会けんぽ以外については、退職前に高額の給与が支払われていた者について、退職前と同等の負担を課すことが適当な場合もあると考えられることから、健康保険組合の実状に応じて柔軟な制度設計が可能となるよう、改正後は、規約で定めることにより、任意継続被保険者の保険料の算定基礎を、上記「①退職時の標準報酬月額 又は ②平均の標準報酬月額のうちいずれか低い額」ではなく、「①退職時の標準報酬月額(又は①退職時の標準報酬月額 未満②平均の標準報酬月額 超で規約で定めた標準報酬月額)」とすることもできるようになりました。よって、改正前よりも任意継続被保険者の保険料が高くなることがあります。

退職予定者に対して退職後の健康保険の選択肢について説明しているケースもあると思いますが、上記のとおり、2022年1月1日より任意継続被保険者の取扱いが一部変わりましたので、説明時には上記点を踏まえた情報提供が必要になります。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「最新整理 働き方改革関連法と省令・ガイドラインの解説」(共著/日本加除出版株式会社)、「アルバイト・パートのトラブル相談Q&A」(共著/民事法研究会)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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