<2024年4月施行>労働条件の明示事項の追加

2023年4月26日
<知っておきたい!>同一労働同一賃金の取組強化/労働基準監督署との連携も本格化

【5分で納得コラム】今回のテーマは「労働条件の明示事項の追加」です。

1. 労働条件の明示

労働基準法15条1項では、使用者に対して労働契約締結時に労働者に労働条件を明示することを義務付けています。また、その中でも賃金や労働時間などの重要な労働条件については原則として書面により明示することを求めています。これは、労働条件があいまいなまま労働契約を締結することにより、予期せず低い労働条件で働くことになるなどのトラブルを防止するためです。

なお、2019年4月からは、労働者が希望した場合はメールやSNS等の書面以外の方法により労働条件を明示することも認められています。

2. 現行の明示事項

現行制度において労働契約締結時に労働者に明示すべき労働条件は、以下の①~⑭の事項になります。

なお、②は期間の定めのある労働契約で期間満了後に当該労働契約を更新する場合があるものに限り、⑦~⑭はこれらに関する定めをしない場合は明示の必要はありません。また、①~⑥(昇給に関する事項を除く。)は原則として書面で明示する必要があります。

  • ① 労働契約の期間に関する事項
  • ② 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  • ③ 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  • ④ 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • ⑤ 賃金(退職手当及び⑧の賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • ⑥ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  • ⑦ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  • ⑧ 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与等並びに最低賃金額に関する事項
  • ⑨ 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • ⑩ 安全及び衛生に関する事項
  • ⑪ 職業訓練に関する事項
  • ⑫ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • ⑬ 表彰及び制裁に関する事項
  • ⑭ 休職に関する事項

3. 追加された明示事項

省令改正により、2024年4月1日から、労働契約締結時に労働者に明示すべき労働条件が追加されます。

追加された明示事項は以下のとおりで、厚生労働省のモデル労働条件通知書の記載例では赤字箇所になります。

① 就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲
雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務に加えて、その後の異動の範囲を明示します。

【有期労働契約の場合】

② 通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限
更新上限(有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限)の有無とその内容を明示します。

③ 無期転換申込みに関する事項及び無期転換後の労働条件
無期転換申込みの権利が発生する契約を締結する場合は、その更新のタイミングごとにその旨と無期転換後の労働条件を明示します。

□厚生労働省のモデル労働条件通知書の記載例(抜粋)

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労務トラブルを防止するためにも、労働契約締結時に労働者に労働条件を明示して誤解がないよう両者で確認する対応はとても重要ですので、早めに準備を進めましょう。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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