「四半期開示の見直しに関する実務の方針」について解説します

2023年12月13日
「四半期開示の見直しに関する実務の方針」について解説します

【5分で納得コラム】今回は、「四半期開示の見直しに関する実務の方針」について解説します。

1. はじめに

株式会社東京証券取引所は、「四半期開示の見直しに関する実務検討会」(以下「実務検討会」という。)を設置し、2023年6月より、実務検討会において以下の論点について検討を行い、2023年11月22日に「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(以下「実務の方針」という。)を取りまとめました。

  • ・ 1Q・3Q四半期決算短信の開示内容・開示タイミング
  • ・ 1Q・3Q四半期決算短信におけるレビューの一部義務付け・エンフォースメント
  • ・ 見直し後の2Q・通期決算短信の取扱い
  • ・ 決算短信のデータ配信形式
  • ・ 情報開示の充実

今回は、上記論点のうち、「1Q・3Q四半期決算短信の開示内容・開示タイミング」、「1Q・3Q四半期決算短信におけるレビューの一部義務付け」、「見直し後の2Q・通期決算短信の取扱い」および「決算短信のデータ配信形式」の内容をご紹介します。

2. 1Q・3Q四半期決算短信の開示内容・開示タイミング

(1)開示内容

開示内容として、四半期報告書で開示されていた事項のうち、投資者の要望が特に強い事項を四半期決算短信に追加し、開示を義務付けています。

新制度の財務諸表等規則・会計基準のうち、取引所が開示を求める事項以外の省略を認めるとともに、必要な事項(キャッシュ・フローに関する注記)を追加しています。

サマリー情報 「レビューの有無」を注記事項に記載(義務のレビューと任意のレビューを区別)
・「当四半期累計期間における連結範囲の重要な変更の有無」に変更(※1)
添付資料 財務諸表 日本基準、IFRS、米国基準で取扱いに差は設けず、以下の事項は一律義務付け
・連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結包括利益計算書(※2)
(CF計算書は投資判断に有用な情報として、投資者ニーズに応じた開示を要請)
注記事項 現行の注記事項に「セグメント情報等の注記」「キャッシュ・フローに関する注記」を追加
・ 継続企業の前提に関する注記
・ 株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
・ 会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示
・ 四半期特有の会計処理
セグメント情報等の注記(新制度における半期報告書と同水準)
キャッシュ・フローに関する注記(CF計算書を省略する場合)
その他 経営成績等の概況(※3)
継続企業の前提に関する重要事象等(現行と同じ)
レビュー報告書(レビューを受ける場合のみ添付)

※1:現行の 「重要な子会社の異動(特定子会社の異動)」から、四半期報告書に合わせて、「連結範囲の重要な変更」とすることを意味している
※2:四半期会計期間に係る連結損益計算書及び連結包括利益計算書については、新制度における半期報告書において2Q会計期間に関する開示はなされないことが想定されること等を踏まえ、省略を認める
※3:決算説明資料など決算短信以外での開示を行うことも可(その場合、該当書類を参照すべき旨・参照方法を記載)

開示が義務付けられる事項以外についても、原則として、上場会社が投資者ニーズを適切に把握し、投資者ニーズのある事項に関して積極的に開示することが重要としています。

(2)開示タイミング

決算の内容が定まり次第開示を求めるとし、四半期末から45日を経過する場合にはその状況について適時開示を求めています。

①レビューを受けない場合

1Q・3Qは、短信に一本化されることから、決算短信において開示を予定している事項が定まった場合に開示します。

②レビューを受ける場合

現行の四半期決算短信は、法定開示に先立って決算内容を開示する速報としての機能を十分に発揮できるよう、レビュー終了を待たずに開示するよう要請していますが、1Q・3Qは、短信に一本化されることから、法定開示に対する速報としての位置づけはなくなります。

(ア)レビューを義務で受ける場合

「決算の内容が定まった」と判断する時点は、信頼性の観点からレビューを義務付けている趣旨に鑑み、原則としてレビューが完了した時点とします。

(イ)レビューを任意で受ける場合

「決算の内容が定まった」と判断する時点は、各上場会社において判断することとします(短信に一本化されることを踏まえて、レビューが完了した時点と判断することでも差し支えない)。

3. 1Q・3Q四半期決算短信におけるレビューの一部義務付け

1Q・3Q四半期決算短信について監査人によるレビューは原則任意です。ただし、会計不正等により、財務諸表の信頼性確保が必要と考えられる場合に、監査人によるレビューを義務付けるとしています。

その際、上場会社・監査人における予見可能性の観点から、義務付けの要件を明確に規定しています。具体的には、会計不正等を踏まえた監査人の意見や金商法上の経営者による財務報告に係る内部統制の評価、監査人の監査・レビューが求められる法定開示書類の提出状況等をその要件としています。

義務付け 要件 ① 直近の有価証券報告書・半期報告書・四半期決算短信(レビューを行う場合)において、無限定適正意見(結論)以外の場合
② 直近の有価証券報告書において、内部統制監査報告書における無限定適正意見以外の場合
③ 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合
④ 直近の有価証券報告書・半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合(財務諸表の信頼性の観点から問題がないことが明らかな場合を除く)
⑤ 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合
※ ①・③について、直近の有価証券報告書・半期報告書の訂正を行う場合で、訂正報告書において要件に該当する場合も対象
対象期間 要件該当以後、提出される1Q・3Q財務諸表については、レビュー義務付け
解除要件 要件該当後、提出される有価証券報告書・内部統制報告書において、上記①~④の要件にいずれも該当しない場合に義務付けを解除

4. 見直し後の2Q・通期決算短信の取扱い

2Q・通期は、法定開示が存続することから、2Q・通期の決算短信については、現行の取扱いを維持します。

法定開示(半期報告書・有価証券報告書)に対する速報という位置付けを維持し、レビュー・監査の対象外とします(1Q・3Qにおいて、規則によりレビューが義務付けられる場合も同様)。

開示内容は、現行の取扱いから変更はありません(2Q短信において、1Q・3Q短信で追加される事項について、「開示の義務付けはせず、速報性と投資者ニーズを踏まえ、各社の判断」とします)。

なお、2Qの連結財務諸表の様式については、1Q・3Q短信に適用される財務報告の枠組みではなく、新制度における半期報告書に適用される財務諸表等規則に従うものとされます。

2Qの開示資料名は、1Q・3Q短信との連続性を踏まえて、「中間決算短信」等ではなく、「第2四半期(中間期)決算短信」となります。

5. 決算短信のデータ配信形式

情報ベンダーの情報取得手段の継続性、個人投資家を含む幅広い情報利用者の利便性、上場会社における実務負担への影響などを踏まえて見直したものです。配信形式の平仄を揃える観点から、第2四半期および通期においても同様としています。

現様式 新様式
PDF XBRL HTML PDF XBRL HTML
サマリー情報
添付資料 経営成績等の概況 任意
財務諸表 任意 ※1
注記事項 任意 ※2
(1Q・3Qである場合のみ)
レビュー報告書

赤字が変更箇所(※3)

※1 :米国基準について、現様式ではXBRLの提出を不要としているが、新様式ではXBRL(包括タグ)の提出を求める
※2 :注記事項のうちXBRLの提出を求める範囲は、四半期報告書において詳細タグが付されかつ、情報ベンダーにおいてXBRLデータの利用が確認されている事項とし、会計基準ごとに以下のとおりとする(該当する注記事項を開示する場合に限りXBRLの提出を求める)
日本基準:「セグメント情報等の注記」、「貸借対照表関係の注記」、「損益計算書関係の注記」
IFRS:「セグメント情報の注記」
米国基準:該当なし
※3 :現在、記載要領にて、XBRLの提出を「要請」しているが、提出実態や1Q・3Q四半期報告書(XBRL)が廃止されることから、記載要領にて、XBRLおよびHTMLの提出を「義務」とする(外国会社等XBRLが用意されていない一部の会社を除く)


株式会社東京証券取引所HP
・四半期開示の見直しに関する実務の方針
https://www.jpx.co.jp/news/1023/20231122-01.html

執筆陣紹介

仰星監査法人

仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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