時間外労働の割増率とは?
2023年4月からの引き上げも併せて確認しましょう

2022年11月10日
時間外労働の割増率とは?2023年4月からの引き上げも併せて確認しましょう

【5分で納得コラム】今回のテーマは「時間外労働の割増率」です。

2023年4月1日からの割増賃金率の引き上げ

大企業にはすでに適用されている時間外労働の割増賃金率(50%)が、2023年4月1日から中小企業にも適用されます。

1. 割増賃金率の引き上げ

長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や仕事と生活の調和を図ることを目的に労働基準法が改正され、2010年4月1日から施行されています。その改正内容のひとつが「割増賃金率の引き上げ」です。

具体的には、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を25%から50%へ引き上げるもので、中小企業については経営体力や業務処理体制の見直しなどの速やかな対応が困難であること等から経済的負担が大きいとして、当分の間、その適用が猶予されていましたが、働き方改革法検討時にこの点についても検討がなされ、2023年4月1日から中小企業の適用猶予が廃止されることになりました。

これにより、すべての企業において月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%になります。

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※パンフレット「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」(厚生労働省)より抜粋

2. 代替休暇制度の導入

月60時間超の時間外労働の割増賃金率50%と、月60時間以内の時間外労働の割増賃金率25%の差の25%については、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を付与することも可能になっています。この休暇を「代替休暇」といいます。 代替休暇の制度を導入する場合は、労使協定で法定の事項を定めるなどの一定の手続きが必要になります。
★労使協定で定める事項
  • ① 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
  • ② 代替休暇の単位
  • ③ 代替休暇を与えることができる期間
  • ④ 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

なお、代替休暇を取得するか否かは労働者の意向によるため、代替休暇の制度を導入した場合であっても会社が当該休暇を取得するよう強制することはできません。

中小企業の割増賃金率の引き上げ適用猶予廃止まで残すところ4ヵ月強となりましたが、長時間労働が生じている中小企業においては、この間に、時間外労働が月60時間以内となるよう業務体制を見直すとともに、月60時間超の時間外労働が生じてしまった場合の対応準備(給与規程の改定、勤怠システムや給与計算の対応、代替休暇の導入検討など)が必要になります。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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