過重労働解消相談ダイヤル

2019年12月25日

厚生労働省では、過労死等を防止することの重要性についての関心と理解を深めるため、11月を「過労死等防止啓発月間」と定めて、過重労働が行われている事業場などへの重点監督や、ベストプラクティス企業への職場訪問(のちにWEBサイトで事例紹介)、過重労働解消のためのセミナーを開催するなどの「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。
そのキャンペーンのひとつに、一般から労働に関する相談を無料で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」があり、去る10月27日に実施された相談ダイヤルの結果が12月3日に公表されました。

過重労働解消相談ダイヤル

「過重労働解消相談ダイヤル」は毎年実施されていますが、令和元年の相談件数は269件でした。ちなみに、平成30年は501件でしたので、前年に比べて相談件数は減少しています。

相談の内容は、「長時間労働・過重労働」に関するものが90件(33.4%)、「賃金不払残業」が69件(25.6%)、「休日・休暇」が31件(11.5%)、「パワーハラスメント」が29件(10.7%)となっています。
今年は、働き方改革法で年次有給休暇に関する改正が行われた影響からか、例年、上位には含まれない「休日・休暇」に関する相談が3番目に多く寄せられたようです。

■相談内容(上位3つ)※括弧内は相談件数269件に対する割合
①長時間労働・過重労働 90件(33.4%)
②賃金不払残業 69件(25.6%)
③休日・休暇 31件(11.5%)

相談は、労働者本人からのものが最も多いですが、約2割は家族から寄せられています。なお、家族からの相談は、例年一定割合(2~3割程度)を占めています。

■相談者の属性(上位3つ)※括弧内は相談件数269件に対する割合
①労働者 180件(66.9%)
②労働者の家族 53件(19.7%)
③その他 20件(7.4%)

具体的な相談事例をみると、厳しい内容の相談が寄せられていることがわかります。
なお、労働基準関係法令上、問題があると認められるものについては、相談者の希望を確認した上で労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど必要な対応を行っているとされています。

相談事例

長時間労働・過重労働

  • ○ 一般貨物自動車運送業のドライバー(運輸交通業)【60代、労働者】
    朝6時頃から深夜11時頃まで勤務しており、1日17時間以上働いている。会社には、タイムカードなどの出退勤記録がない。休みは毎週日曜日しかなく、疲れが溜まって身体が重い。休憩中も再配達の電話が入るため、休憩も取れない。
  • ○ 製造業の作業員(製造業)【年齢不明、労働者の家族】
    毎日4時間から5時間の残業を行っており、月の残業時間は100時間を超えている。休憩がなく、昼食も取れていない状況で、体重が減り、体調を崩している。
  • ○ 飲食店の店長(接客娯楽業)【30代、労働者の家族】
    休日がほとんどなく、朝4時頃に自宅を出て翌日の午前2時頃帰宅する生活である。月に1回から2回程度は休日であるが、自宅でずっと寝ており、疲れ切っている。
  • ○ 製造業の作業員(製造業)【年齢不明、労働者】
    会社と労働組合との間で、月90時間が上限の36協定届(時間外労働・休日労働に関する協定届)を締結しているが、実際は月100時間以上の残業となっており、中には月170時間も残業を行っている者もいた。

賃金不払残業

  • ○ 広告制作会社のアシスタント(金融・広告業)【20代、労働者の家族】
    忙しいときは1日20時間労働が連続し、食事の時間も取れないぐらい忙しい状態である。会社から「月45時間以上働けば残業代が出る」と言われていたが、全く残業代が支払われない。
  • ○ 派遣業の工場作業員(その他の事業)【50代、労働者】
    タイムカードで労働時間管理を行っているが、実際の労働時間を記録したタイムカードと賃金を計算するためのタイムカードの2種類を使用し、使い分けている。毎月の残業時間は月100時間を超えているが、賃金計算するためのタイムカードは実際の残業時間より低くなっているため、賃金不払残業となっている。
  • ○ 不動産管理業の事務(その他の事業)【30代、労働者】
    労働時間管理は、自己申告制となっており、1箇月の時間外・休日労働時間は100時間から150時間になる。上司から、「残業が多いのは個人の責任だ」と注意されるため、1箇月40時間までしか残業申請できない状況である。
  • ○ 建設業の作業員(建設業)【年齢不明、労働者】
    社長に対し、残業代の支払いを求めたところ「賃金に含まれている」と言われたが、賃金は基本給のみであり、これまでに固定残業手当が含まれていると聞いたことがない。固定残業手当や役職手当等は支払われていない。

ハラスメント

  • ○ 繊維製品製造業の作業員(製造業)【40代、労働者の家族】
    上司から、指示に従わないと叱責を受け、「アホ」など人格を傷つける言葉を言われ、失敗すると身体を叩かれたりした。数日後には、役員から呼び出され、自ら判断し退職するよう言われた。
  • ○ 金属製品製造業の作業員(製造業)【年齢不明、労働者】
    社長から日々、叱責を受けている。機械を使用して作業をしているが、失敗すると社員全員の前で社長から叱責を受ける。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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