派遣労働者の同一労働・同一賃金

2019年10月24日

労働者派遣法の改正により、2020年4月1日から、派遣労働者についても同一労働・同一賃金の考え方が導入され、改正法施行後は、不合理な待遇差を解消するため、「派遣先均等・均衡方式」又は「労使協定方式」のいずれかの方法により派遣労働者の待遇を決定することが義務づけられます。

派遣労働者の同一労働・同一賃金

派遣先均等・均衡方式

「派遣先均等・均衡方式」は、「派遣先の通常の労働者」との均等・均衡待遇を図る方式です。
基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理等のすべての待遇のそれぞれについて、派遣先の通常の労働者との間に不合理な待遇差がないよう決定することが求められます。
なお、派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で、①職務の内容及び②職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、派遣労働者に対する差別的取扱いが禁止され、「均等待遇」が求められます。また、①又は②が異なる場合は、派遣労働者の待遇は①②の違いに加えて「③その他の事情」の違いを考慮して、派遣先の通常の労働者との間に不合理な待遇差のないよう、「均衡待遇」が求められます。「派遣先均等・均衡方式」を採用する場合は、派遣元は派遣先の待遇に関する情報が必要となります。
よって、派遣先に対して、派遣労働者が従事する業務ごとに比較対象となる労働者(比較対象労働者)を選定させた上で、派遣元に次の情報を提供するよう義務付けています。

  • 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
  • 比較対象労働者を選定した理由
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的(例:基本給は能力向上の努力促進及び長期勤続奨励)
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項(例:能力・経験及び勤続年数を考慮)

労使協定方式

「労使協定方式」は、派遣元において、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合と、当該労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と一定の要件を満たす労使協定を締結し、当該協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する方式です。
労使協定で、「賃金の決定方法」や「賃金以外の待遇の決定方法」などを定める必要がありますが、以下に定める例のように一定の制約があります。

賃金の決定方法

賃金の決定方法は、一部の例外を除き、次の①②のいずれも満たす必要があります。

  1. ① 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する「一般の労働者の平均的な賃金の額」と同等以上の賃金の額となるものであること
  2. ② 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものであること

➡「一般の労働者の平均的な賃金の額」には、「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」の3区分があり、個別又は合算して同等以上とする必要があります。

賃金以外の待遇(教育訓練及び福利厚生施設を除く。)の決定方法

賃金以外の待遇(教育訓練及び福利厚生施設を除く。)の決定方法は、「派遣元に雇用される通常の労働者」と比較して不合理な待遇差が生じないようにする必要があります。

なお、教育訓練及び福利厚生施設の利用については、労使協定で定める事項からは除外されていますが、労使協定方式を採用した場合でも、「派遣先に雇用される通常の労働者」との均等・均衡待遇が求められます。

どちらの方式を選択するかは、派遣元が決定することになりますが、派遣元が選択した方式によって、派遣先から派遣元への労働者派遣契約締結前に必要となる情報提供の範囲が異なったり、派遣元が派遣労働者に対して説明する待遇の内容が異なるなど備えるべき事項が変わってきます。

大幅でかつ複雑な改正内容となっておりますが、大企業であるか中小企業であるかを問わず、2020年4月1日以降の労働者派遣に関して適用されることとなりますので、改正法施行まで残り半年をきった中で、まずは改正内容を把握した上で、早めの対応準備が必要になります。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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