「働き方改革推進法案」が可決・成立

2018年7月25日

先月29日に、働き方改革推進法案が参議院で可決し、成立しました。
労働基準法の大改正に加えて、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働者派遣法等の複数の法律が改正されますので、今後、各法律の改正内容を把握した上で対応が必要になります。
厚生労働省令等の改正に関する詳細事項の検討はこれからであるため、今回は、改正内容の大きな項目と施行日を表にまとめてご紹介します。

働き方改革推進法案

施行日は、➀公布日、➁2019年4月1日、➂2020年4月1日、➃2021年4月1日、➄2023年4月1日の5種類あります。

項目 主な改正内容 施行日
大企業 中小企業
労働基準法 時間外労働の上限規制 原則(上限)
  月45H・年360H(一部変形を除く。)
例外(上限)
(1)時間外(休日含む。)月100H未満
(2)時間外(休日含む。)2ヵ月ないし6ヵ月平均80H
(3)時間外1年720H
(4)月の例外適用年6回まで
※上限規制の適用除外・適用猶予あり
中小企業の割増賃金率に関する猶予措置の廃止 中小企業に月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)を適用
年次有給休暇の取得促進 年5日の年次有給休暇の付与(10日以上の年休が付与される者に限る。)を義務化
フレックスタイム制の見直し 清算期間の上限の延長、完全週休2日制の下での法定労働時間の計算方法の変更等
高度プロフェッショナル制度の創設 労働時間・休憩・休日・深夜の規定の適用を除外する高度プロフェッショナル制度の創設
労働安全衛生法 産業医にその業務を適切に行うために必要な情報を提供する等の産業医・産業保健機能の強化、労働時間の把握方法の追加等
雇用対策法 働き方改革に係る基本的考えを明らかにするとともに、改革を総合的・継続的に推進するための基本方針の追加等
じん肺法 心身の状態に関する情報の取扱い追加
労働時間等設定改善法 労働時間等の設定の改善のひとつとして勤務間インターバル制度の追加、企業単位での委員会決議による労働基準法の適用特例の追加等
パートタイム労働法(労働契約法) 短時間・有期雇用労働者を対象に法律名を含めて見直し。短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関する判断基準の明確化、有期雇用労働者の均等待遇確保、短時間・有期雇用労働者への正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明義務の追加等
労働者派遣法 派遣契約締結時における派遣先から派遣元への待遇に関する情報等の提供義務、派遣元における派遣先の労働者との均等・均衡待遇又は一定の要件を満たす労使協定による待遇確保、派遣元における派遣労働者への派遣先の対象労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明義務の追加等

※上表の「中小企業」とは、下表の「1.資本金の額又は出資の総額」又は「2.常時使用する労働者の数」のいずれかに該当する企業をいいます。

業種 1.資本金の額又は出資の総額 2.常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

「業種」については下記のサイトで確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/za/0730/d27/d27-02.pdf

「年次有給休暇の取得促進」など、対応策を講ずる必要がある項目のうち早いものでは施行日は来年2019年4月1日となり、準備期間は半年強となりますので、今後、発信される予定の厚生労働省令等の詳細情報を収集しつつ、早めの検討が必要となります。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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