労基法違反等の公表事案、企業名一覧が掲載される

2017年5月24日
「『過労死等ゼロ』緊急対策」の取り組み

過労死をはじめとする長時間労働による問題をなくすため、昨年12月に「『過労死等ゼロ』緊急対策」が厚生労働省より公表されましたが、その取り組みのひとつとして掲げられていた「労働基準法等の法令違反で公表した事案のホームページへの掲載」が、2017年5月10日から厚生労働省のWEBサイトでスタートしました。
 ※【厚生労働省】労働基準関係法令違反に係る公表事案

企業名公表事案の一覧、全国334社

これまでも各都道府県の労働局のWEBサイトで送検事例の概要が一部掲載されることはありましたが、前述の緊急対策により統一の基準に基づいて公表された事案(企業・事業場名称、所在地、公表日、違反法条項、事案概要等)が各労働局及び厚生労働省のWEBサイトで一定期間(原則、公表日から概ね1年間)掲載されることになり、今回はその第一弾となります。
WEBサイトに掲載する事案は下記①②のいずれかに該当するもので、今回掲載された企業名は全国で334社となっています。今後も全国の事案がとりまとめられ、厚生労働省のWEBサイトで毎月掲載される予定となっています。

① 労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案
②「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)に基づき、局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案


多くは労働安全衛生法違反

今回の334社の掲載事案の違反法条項をみると、多くは労働安全衛生法違反となっており、労働基準法違反は2割程度となっています。ただし、近年長時間労働に関わる指導が強化されていることから、今後は36協定違反等の労働時基準法違反の事案が増えていくことが想定されます。


労働基準監督業務の民間活用の検討

労働基準監督官の人数が限られている中で、現状では定期監督(各労働局の管内事情に即して対象事業場を選定し、年間計画により実施する監督)を実施した事業場数の割合は総事業場数の3%程度となっているようです。
前回取り上げた「働き方改革実行計画」の中で「法改正による時間外労働の上限規制の導入」について紹介しましたが、法規制が強化される中で、合わせてその執行を強化するため、現在、社会保険労務士、弁護士、公認会計士等の資格者や企業での労務経験が豊かな者等を雇用する民間事業者に労働基準監督官の業務を委託する民間活用の拡大を図ることが検討されています。
違反企業名の公表、法規制の強化、法執行の体制整備など、違法な長時間労働を許さない取り組みの強化が着々と進んでいるといえます。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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