働き方改革実行計画
~9つの検討テーマにおける対応策~

2017年4月26日

現在政府においては、「一億総活躍社会」の実現に向けて、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を可能とする社会を追求する「働き方改革」の検討が進められていますが、2016年9月から10回の議論が重ねられ、2017年3月に「働き方改革実行計画」が公表されました。

9つの検討テーマにおける対応策

今回公表された実行計画では、「処遇の改善」、「制約の克服」、「キャリアの構築」の3つの視点から抽出された下表の9つの検討テーマにおける対応策と、2017年度以降10年間のロードマップが示されています。

働き方改革-検討テーマ

今回は、19の対応策のうち注目度の高い「④法改正による時間外労働の上限規制の導入」についてその内容をご紹介します。
36協定で定める限度時間

労働基準法では、時間外労働及び休日労働は禁止されていますが、労使協定を締結し所轄労働基準監督署に届け出た場合は、例外として、労使協定で定める限度時間の範囲内で時間外労働及び休日労働が可能となります。この労使協定は、労働基準法第36条を根拠にしていることから「36協定」といわれます。
36協定で定める時間外労働の限度時間については、“告示”により上限基準が示されており、実務的にはその基準の範囲内で36協定が締結されていますが、仮にその基準を超える限度時間を定めた36協定が締結されていたとしても、現状では罰則の対象とはなりません。また、当該告示では、特別な場合に限り、特別な限度時間を設けることが可能となっていますが、その特別な限度時間については上限基準がないため、労使の話し合いにはよるものの、現状では、例えば月200時間の限度時間を定めることも可能となっています。

時間外労働の上限規制

今回の対応策は、36協定で定める限度時間の基準を、“告示”ではなく“法律”に定めて格上げすることとし、その基準に違反した36協定を締結した場合は罰則の対象とすることで強制力を持たせる内容となっています。
限度時間の基準についても、次の通り、例外として認められる特別な場合(臨時的な特別の事情がある場合)の限度時間の上限が設けられています。

■36協定で定めることができる時間外労働時間の基準

原 則 月45 時間以内、かつ、年360 時間以内
例 外
  1. 臨時的な特別の事情がある場合は、次の①~④のすべてを満たす範囲内
  2. ①年720時間以内
  3. ②月45時間を超えることができる回数は年6回以下
  4. ③2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月の平均で、いずれにおいても休日労働を含んで80時間以内
  5. ④休日労働を含んで月100時間未満
月平均60時間に向けた取り組みを

実行計画の中でも「中小企業を含め、急激な変化による弊害を避けるため、十分な法施行までの準備時間を確保する。」とあり、法律が改正され、施行されるまでには一定期間が設けられる予定ですが、時間外労働時間を削減することは一朝一夕にできるものではないため、法改正に向けた準備期間に猶予はないと言えるでしょう。
過重労働による健康障害等の様々な事件を踏まえて、昨年度より各企業において労働時間削減に向けた対応策を講じつつあるようですが、上記に示された限度時間の内容を前提に、年720時間=月平均60時間に向けた取り組みをただちに開始する必要があります。
なお、例外の③、④については「休日労働を含んで」とあり、これまでの36協定における時間外労働時間の考え方とは少し異なる点も含まれていますので、限度時間数の管理方法も含めた検討が必要になるでしょう。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


≪岩楯めぐみ氏の最近のコラム≫

● 平成28年「就労条件総合調査」の結果が公表される

● 労働時間の把握に関する「新ガイドライン」

● 「過労死等ゼロ」緊急対策



※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

コラム一覧に戻る

過去の社労士コラム一覧に戻る