【重要】求人情報は的確に表示することが義務付けられています

2022年12月22日
【重要】求人情報は的確に表示することが義務付けられています

【5分で納得コラム】今回のテーマは「求人情報の的確表示(義務化)」についてです。

1. 職業安定法2022年10月1日改正

インターネットを利用した求人・求職活動が広がり、多様なサービスが提供されています。その中には、これまでの法律では想定していなかった新しい形態のサービスも含まれています。

これらの様々なサービスを安心して利用できるよう、新しい形態のサービスも職業安定法上の規制の対象とし、また、求人メディア等が遵守すべきルールを明確にすべく、職業安定法が改正され2022年10月1日から施行されました。

今回の改正は主に新しい形態のサービスも含めた募集情報等を提供する事業者(募集情報等提供事業者)に対するものですが、労働者の募集を行う「求人企業」に対しても同様に求められる内容も含まれますので、その中から「求人情報の的確表示」についてご紹介します。

2. 求人情報の的確表示

改正前の職業安定法においても、改正前の第42条で求人情報の的確表示を求めていましたが、努力義務にとどまるものでした。改正後は、新設された第5条の4で規定され、的確表示を義務化しています。

*職業安定法 〈新設〉
(求人等に関する情報の的確な表示)
第5条の4 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、この法律に基づく業務に関して新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(以下この条において「広告等」という。)により求人若しくは労働者の募集に関する情報又は求職者若しくは労働者になろうとする者に関する情報その他厚生労働省令で定める情報(第三項において「求人等に関する情報」という。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
2 労働者の募集を行う者及び募集受託者は、この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
※以下省略

求人企業に求められる求人情報の的確表示に関するポイントは、以下の2点になります。

「求人情報」や「自社に関する情報」について
虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしないこと
② 求人情報を正確・最新の内容に保つこと

3. 「虚偽の表示・誤解を生じさせる表示」の例

例えば、求人情報を提供するときに、意図してその情報と実際の労働条件を異なる内容にした場合は虚偽の表示に該当するとされています。

例)実際に求人を行う企業と別の企業の名前で求人を行う。
例)「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイト・ パート 」の募集をする。
例)基本給○万円と表示しながら実際にはその金額よりも低額の賃金を予定している。

また、虚偽の情報でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるようなものは、誤解を生じさせる表示に該当するとされています。
このため、指針において次の点に留意することとしています。

・関係会社・グループ企業が存在している企業が募集を行う場合に、実際に雇用する予定の企業と関係会社・グループ企業が混同されることのないように表示しなければならないこと。
 × 優れた製品開発実績を持つグループ会社の実績を大きく記載し、あたかもその求人企業の実績であるかのように表示する。

・雇用契約を前提とした労働者の募集と、フリーランス等の請負契約の受注者の募集が混同されることのないよう表示しなければならないこと。
 × 請負契約の案件であることを明示せず、労働者の募集と同じ表示をする。

・月給・時間給等の賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、昇給、固定残業代等の賃金等について、実際よりも高額であるかのように表示してはならないこと。
 × 社内で給与の高い労働者の基本給を例示し、全ての労働者の基本給であるかのように表示する。
 × 固定残業代について基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示する。

・職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはならないこと。
 × 営業職が中心の業務について事務職と表示する。

4. 「正確・最新の内容に保つ」とは

求人情報等を正確・最新の内容に保つ方法として、指針で以下の対応が例示されています。今後は、これらを参考に求人情報を管理する体制が必要になります。

・募集を終了した場合や募集情報の内容を変更した場合には、速やかに募集情報の提供終了や内容の変更をする。
例)自社の採用WEBサイト等を速やかに更新する。

・求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用して労働者の募集を行っている場合は、募集の終了や内容の変更を当該募集情報等提供事業者において提供する募集情報にも反映するよう依頼する。

・募集情報の時点を明らかにする。

例)募集を開始した時点、内容を変更した時点を記載する。

・求人メディア等の募集情報等提供事業者から、募集情報の訂正や内容の変更を依頼された場合には、速やかに対応する。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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