育児休業期間中の賞与にかかる社会保険料免除の仕組み
2022年10月1日以降、どう変わった?

2022年12月8日
育児休業期間中の賞与にかかる社会保険料免除の仕組み 2022年10月1日以降、どう変わった?

【5分で納得コラム】今回のテーマは「育児休業期間中の賞与にかかる社会保険料免除の仕組み」についてです。

1. 改正の背景

育児休業期間中の社会保険料を免除する仕組みには、「毎月の社会保険料」を免除する仕組みと「賞与にかかる社会保険料」を免除する仕組みの2つがありますが、今回取り上げるのは「賞与にかかる社会保険料」を免除する仕組みです。

改正前は、その月の末日に育児休業を取得している場合は、当該月に支払われる賞与にかかる社会保険料が免除される仕組みになっていました。このため、例えば⽉末1⽇だけ育児休業を取得した場合でも、当該月に支払われる賞与にかかる社会保険料が免除されることがありました。

実際、社会保障審議会医療保険部会の配布資料によれば、健保組合の男性被保険者における保険料免除対象者数は、1年のうち12月が最も多い状況がみられたようです。これらの中には、賞与にかかる社会保険料が免除になることも意識して取得月を選択した人がいたかもしれません。

このように、改正前においては、社会保険料免除のための育児休業の取得も可能な仕組みになっており、このような形での取得は、公平性、納得感の点から問題があると考えられていました。

2. 改正後の仕組み(2022年10月1日から)

育児休業の期間が短いほど賞与にかかる社会保険料免除を目的として育児休業の取得月を選択する誘因が働きやすいため、改正後の2022年10月1日からは、連続して1ヵ月超の育児休業(出生児育児休業も含みます。)を取得した場合に限って、賞与にかかる社会保険料が免除される仕組みに変わりました。

これにより、例えば以下のようなケースでは、改正後、賞与にかかる社会保険料が免除されなくなりました。

<例> 12月25日から1月14日までの21日間育児休業を取得した場合

12月に支払われる賞与にかかる社会保険料は?

改正前 ➡ その月の末日に育児休業を取得しているため免除される免除対象

改正後 ➡ 連続して1ヵ月超の育児休業を取得していないため免除されない免除対象外

3. 免除対象となる“1ヵ月超”の育児休業とは

賞与にかかる社会保険料の免除対象となる育児休業は、その期間が “1ヵ月超”であるものに限られますが、この期間は育児休業開始日から育児休業終了日までの「暦日」で判定することとされており、土日等の休日もその期間に含まれます。

例えば、育児休業期間が12月16日から翌1月16日までの場合は、1ヵ月と1日ですので“1ヵ月超”になりますが、12月16日から翌1月15日までの場合は、ちょうど1ヵ月ですので“1ヵ月超”にはなりません。

また、賞与にかかる社会保険料が免除される対象月は、“1ヵ月超”の育児休業期間中のうち月末時点で育児休業を取得している月になります。よって、前述の育児休業期間が12月16日から翌1月16日までの場合であれば、賞与支給月が12月であれば賞与にかかる社会保険料が免除されますが、賞与支給月が1月であれば賞与にかかる社会保険料は免除されませんので注意が必要です。

4. その他の注意点

育児休業期間が“1ヵ月超”であるか否かは、育児休業開始日から育児休業終了日までの暦日で判断しますが、育児休業期間中に2022年10月1日以降の新しい仕組みである出生時育児休業中における就業日数や一時的・臨時的に就労した日数がある場合でも、その日数は除かずに算定します。

また、連続して複数回の育児休業を取得している場合は、1つの育児休業とみなして合算して算定します。なお、土日等の休日や年次有給休暇を取得した日等の労務に服さない日を挟んで複数回の育児休業を取得していた場合も、実質的に連続して育児休業を取得しているため、1つの育児休業とみなして算定します。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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