電子帳簿保存法一問一答に係る追加のQ&A

2021年12月8日
電子帳簿保存法一問一答に係る追加のQ&A

1.はじめに

2021年11月12日に国税庁から電子帳簿保存法一問一答に係る追加のQ&Aが公表されました。これは、電子帳簿保存法Q&A(一問一答)のうち、質問の多かったものに対する追加の解説資料という位置づけです。

今回は、この追加のQ&Aの項目うち、「電子取引の取引情報に係る電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合の取扱い」及び電子取引関係の追加のQ&Aを一部抜粋してご紹介します。

2.電子取引の取引情報に係る電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合の取扱い(電子帳簿保存法一問一答に係る追加のQ&A、Ⅳ補足説明、補4)

「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】、問2)。

2022年1月1日以後、事業規模に係わらず全ての企業・個人事業主において電子取引の取引情報に係る電子データを保存する義務が生じます。この義務に(一部)違反した場合についての国税庁の見解が以下のように示されました。

電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。

ただし、上記はあくまで、電子データの一部を保存していなかった場合についての見解であり、電子取引の取引情報を書面で保存することを認めるということではないため、電子取引の取引情報を電子データで保存することへの対応は引き続き必要であると考えられます。

3.電子帳簿保存法一問一答に係る追加のQ&A(Ⅲ電子取引関係)のご紹介

電子帳簿保存法一問一答に係る追加のQ&Aは、「Ⅰ電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係」、「Ⅱスキャナ保存関係」、「Ⅲ電子取引関係」及び「Ⅳ補足説明」から構成されていますが、今回は、「Ⅲ電子取引関係」の追加のQ&Aのみ内容を一部抜粋してご紹介いたします。

項目 質問 回答・解説の概要
(1)【制度の概要等】関係(紙と電子データの重複) 電子取引で受け取った取引情報について、同じ内容のものを書面でも受領した場合、書面を正本として取り扱うことを取り決めているときでも、電子データも保存する必要がありますか。 電子データと書面の内容が同一であり、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足ります。
ただし、当該電子データに正本を補完するような取引情報が含まれている場合等には、正本である書面の保存に加え、電子データの保存も必要になると考えられます。
(2) 【保存方法】関係(EDI の保存方法) EDI 取引を行った場合、取引データそのものを保存する必要があるでしょうか、それとも EDI 取引項目を他の保存システムに転送し PDF データ等により保存することも可能でしょうか。 データそのものに限らず、当該 EDI データについて、取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集されたデータにより保存することも可能と考えられます。
(3) 【検索機能】関係(メールの保存方法) 自社のメールシステムでは受領した取引情報に係る電子データについて検索機能を備えることができません。その場合に、メールの内容をPDF等にエクスポートし、検索機能等を備えた上で保存する方法でも認められますか。 当該メールに含まれる取引情報が失われないのであれば、メールの内容をPDF等にエクスポートするなど合理的な方法により編集したもので保存することも認められます
(4) 【検索機能】関係(取引金額/税抜・税込) 検索要件の記録項目である「取引金額」については税抜、税込どちらとすべきでしょうか。 帳簿の処理方法(税込経理/税抜経理)に合わせるべきと考えられますが、受領した国税関係書類に記載されている取引金額を検索要件の記録項目とすることとしても差し支えありません。
(5) 【検索機能】関係(取引金額/単価契約) 例えば単価契約のように、取引金額が定められていない契約書や見積書等については、検索要件における「取引金額」をどのように設定すべきでしょうか。 記載すべき金額がない書類については、「取引金額」を空欄又は0円と記載して差し支えありませんが、空欄の場合でも空欄を対象として検索できるようにしておく必要があります。
(6) 【検索機能】関係(ダウンロードの求め) 「ダウンロードの求め」に応じる場合、当該電磁的記録の提出の際、データの形式や並び順について決まりがあるのでしょうか。 税務調査の際に税務職員が確認可能な状態で提供されれば形式や並び順は問いませんが、通常出力できるであろうファイル形式等での提供が必要です。
(7) 【その他】関係(留意事項) 電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、一度、出力して書面にしたものを、スキャナ保存することは認められますか。 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面等は、他者から受領した電子データとの同一性が必ずしも十分に確保できているとは言えないことから、スキャナ保存することは認められません。

国税庁HP
・電子帳簿保存法Q&A(一問一答)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~
「お問合せの多いご質問(令和3年 11 月)」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf
・電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
(凡例)
・法:国税通則法
・規則:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則
・取扱通達:令和3年度の電子帳簿保存法の取扱通達

執筆陣紹介

仰星監査法人

仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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