在職老齢年金の仕組み「令和6年度の支給停止調整額は50万円」

2024年4月24日
在職老齢年金の仕組み「令和6年度の支給停止調整額は50万円」

【5分で納得コラム】今回は、電子申請が可能な「在職老齢年金の仕組み」について解説します。

1. 在職老齢年金

会社に勤務して厚生年金保険に加入しながら受ける老齢厚生年金のことを在職老齢年金といいますが、在職老齢年金においては、年金額の一部又は全部が支給停止される場合があります。

なお、在職老齢年金における年金額の支給停止の対象になり得るのは、厚生年金保険に加入している者(厚生年金保険の被保険者)となりますので、週の所定労働時間が20時間未満である者などの厚生年金保険への加入要件を満たさない者については、年金額が減額されることはありません。

また、厚生年金保険は70歳未満を対象とする保険ですので、70歳以降は加入することはできませんが、70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に勤務している場合は、70歳未満の場合と同様の考え方で年金額の一部又は全部が支給停止されることがあります。

2. 支給停止額の計算方法

在職老齢年金における支給停止額の計算方法は、以前は、65歳未満と65歳以上でその方法が異なっていたり、計算方法も金額水準によって違っていたりして複雑でしたが、現在は、年齢等によらず、基本月額(①)、総報酬月額相当額(②)に応じて、以下の計算方法で算定されます。

① + ② ≦ 支給停止調整額の場合
 ➡ 支給停止額(月額)= 0円(全額支給)

① + ② > 支給停止調整額の場合
 ➡ 支給停止額(月額)=(①+②-支給停止調整額)÷ 2

なお、基本月額(①)とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額をいい、総報酬月額相当額(②)とは、その月の標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額の合計を12で除した額を加算した額をいいます。ただし、70歳以上の場合は、「標準報酬月額」は「標準報酬月額に相当する額」、「標準賞与額」は「標準賞与額に相当する額」となります。

3. 令和6年度の支給停止調整額は50万円

令和6年度の支給停止調整額は50万円となり、令和5年度の48万円より2万円引き上げられています。なお、計算例は以下のとおりです。

(例) 老齢厚生年金(年額)120万円、
    標準報酬月額(月額) 32万円、1年間の標準賞与額の合計120万円の場合

    ①基本月額      120万円÷12=10万円
    ②総報酬月額相当額  32万円+(120万円÷12)=42万円

    ①+②=10万円+42万円=52万円>50万円
     支給停止額(月額)=(10万円+42万円-50万円)÷2=1万円

また、加給年金額が支給されている場合で老齢厚生年金が全額支給停止されるときは、加給年金額についてもその全額が支給停止されます。
加えて、雇用保険から高年齢雇用継続給付を受ける場合は、さらに年金の一部が支給停止されることがあります。

高齢化に伴い年金を受けながら働くケースは今後ますます増えてくることが想定されますが、60歳以上の者の給与額を決定する際は、在職老齢年金の仕組みも念頭において検討する必要があるでしょう。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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