育児介護休業制度の見直し
~2025年4月1日改正に向けて~

2024年2月22日
育児介護休業制度の見直し~2025年4月1日改正に向けて~

【5分で納得コラム】今回は、「2025年4月改正の育児介護休業制度の見直し」について解説します。

1. 仕事と育児・介護の両立支援の充実

直近では、2022年4月、2022年10月及び2023年4月に改正法が施行され見直しが続いている育児介護休業法ですが、さらに2025年4月1日施行に向けた改正法の検討が始まっています。

今回の改正内容は、男女ともに育児・家事を担いつつ、希望に応じて仕事やキャリア形成との両立が可能となるようにしていくこと、また、介護休業を始めとした両立支援制度が知られずに利用されていないことや制度の趣旨への理解が不十分で効果的な利用がされていないことから両立が困難となっている状況を改善して介護離職を防止することなど、仕事と育児・介護の両立支援を充実させることを目的とした内容になっています。

予定されている改正内容は多岐にわたりますが、その中から一部を抜粋して以下でご紹介します。

2. 子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充

子の年齢に応じて、フルタイムで働きながら育児をするニーズも増していくことから、より柔軟な働き方を選択することができるよう、3歳以降小学校就学前までの支援として、次の2つの措置が検討されています。

〇 次の①から⑤までの措置から、事業主が2つ以上選択して措置を講じ、労働者はその中から1つ選べることとする。

  • ①始業時刻等の変更(フレックスタイム制又は始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ)
  • ②テレワーク等(勤務日の半数程度以上、時間単位で実施可)
  • ③短時間勤務制度(1日6時間の措置等)
  • ④保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配及び費用負担等)
  • ⑤新たな休暇の付与(年間10日、時間単位で取得できるもの)

〇 所定外労働の制限(残業免除)を請求できることとする。

また、制度を利用できるようになる子が3歳になるまでの適切な時期に、労働者に対して制度の説明と取得意向を確認するための面談等を行うことを義務付けることも検討されています。

3. 仕事と介護の両立支援制度の周知の強化

両立支援制度を利用しないまま介護離職に至ることを防止するため、仕事と介護の両立支援制度の周知の強化として、次の3つの措置が検討されています。

〇 家族の介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合に、事業主が、両立支援制度等に関する情報を個別に周知し、意向を確認することを義務付ける。

〇 介護保険の第2号被保険者となる40歳のタイミング等の効果的な時期に、事業主が、労働者に対して、介護に関する両立支援制度等の情報を記載した資料を配布する等の情報提供を一律に行うことを義務付ける。

〇 仕事と介護の両立支援制度の利用が円滑に行われるようにするため、事業主に次の①から④までのいずれかの措置を講じることを義務付ける。

  • ① 介護に関する両立支援制度に係る研修の実施
  • ② 介護に関する両立支援制度に関する相談体制の整備
  • ③ 介護に関する両立支援制度の利用事例の収集・提供
  • ④ 介護に関する両立支援制度及び両立支援制度の利用促進に関する方針の周知

なお、上記は、2022年4月1日に施行された「妊娠・出産(本人又は配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」などの仕組みが参考にされています。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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