<2024年4月から本格適用>
建設業における時間外労働の上限規制

2024年1月17日
<2024年4月から本格適用>建設業における時間外労働の上限規制

【5分で納得コラム】今回は、「建設業における時間外労働の上限規制」について解説します。

1. 2024年3月31日で猶予期間終了

働き方改革法により、2019年4月1日から、時間外労働の上限規制のルールが新たに設けられましたが、一部の事業又は業務については、事業等の性格から直ちに当該上限規制を適用することになじまないとして、その適用が猶予又は除外されていました。その対象のひとつが建設業です。
建設業については、2024年3月31日までの猶予期間が終わり、2024年4月1日から以下の時間外労働の上限規制が適用されます。

1. 時間外労働は、原則として月45時間以内・年360時間以内

2. 臨時的な特別の事情がある場合は、
 ①時間外労働は、年720時間以内
 ②時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満
 ③時間外労働と休日労働の合計は、2~6ヵ月のそれぞれの期間において月平均80時間以内

3. 時間外労働が月45時間を超えるのは、年6回以内

よって、建設業において、2024年4月1日以降の期間のみを対象とする時間外労働及び休日労働に関する労使協定(36協定)を締結する場合は、上記の上限規制を踏まえた内容にするとともに、所轄労働基準監督署への36協定の届出は、様式第9号((2)①・(3)を含む特別条項を設ける場合は様式9号の2)により実施する必要があります。

2. 建設業のみに適用される例外の取扱い

2024年4月1日以降の時間外労働の上限規制に関して、建設業のみに適用される例外の取扱いもあります。 それは、労働基準法139条1項に基づき「災害時における復旧及び復興の事業」に限って、上限規制の一部の適用を除外するものです。具体的には、「災害時における復旧及び復興の事業」に該当する場合は、前述の上限規制のうち、以下の②及び③の適用が除外されます。

(2)臨時的な特別の事情がある場合は、
 ② 時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満
 ③ 時間外労働と休日労働の合計は、2~6ヵ月のそれぞれの期間において月平均80時間以内

よって、以下の上限規制の中で対応することになりますが、この場合、以下の時間外労働の他に36協定に定める範囲で休日労働をさせて、月100時間以上又は2~6ヵ月のそれぞれの期間に月平均80時間超になることが認められることになります。

(1)時間外労働は、原則として月45時間以内・年360時間以内
(2)臨時的な特別の事情がある場合は、
   ① 時間外労働は、年720時間以内
(3)時間外労働が月45時間を超えるのは、年6回以内

また、この場合の所轄労働基準監督署への36協定の届出は、様式第9号の3の2((2)①・(3)を含む特別条項を設ける場合は様式9号の3の3)により実施する必要があります。

3. 「災害時における復旧及び復興の事業」とは

「災害時における復旧及び復興の事業」とは、「災害により被害を受けた工作物の復旧及び復興を目的として発注を受けた建設の事業をいい、工事の名称等にかかわらず、特定の災害による被害を受けた道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設などの復旧及び復興の事業が対象となる」とされています。

なお、現状でも、建設業だけでなくすべての事業又は業務を対象に、労働基準法33条1項に基づき「災害その他避けることのできない事由によって、臨時的に必要がある場合」は、所轄労働基準監督長に許可申請等を行うことにより、1.の上限規制とは別に、時間外労働・休日労働を行わせることができますが、労働基準法139条1項に基づく「災害時における復旧及び復興の事業」には、発生が予見困難である地震等の全ての災害時における復旧及び復興の事業が含まれるのに対し、労働基準法33条1項に基づく「災害その他避けることのできない事由によって、臨時的に必要がある場合」は、業務運営上通常予見し得ない災害等が発生した場合が対象になるとしています。

なお、上記の他、両者の違いは、厚生労働省が作成している以下の資料が参考になります。

■労働基準法139条と労働基準法33条の違い(厚生労働省作成資料より抜粋イメージ

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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