賞与にかかる社会保険料について解説します

2023年12月13日
賞与にかかる社会保険料について解説します

【5分で納得コラム】今回は、「賞与にかかる社会保険料」について解説します。

1. 賞与にかかる社会保険料

12月に入り、まさに冬の賞与の支給準備をしている会社も多いと思われますので、今回は、賞与にかかる社会保険料(労働者負担分)の仕組みについてご紹介します。

社会保険料とは、具体的には、雇用保険料、健康保険料(介護保険料を含む)及び厚生年金保険料の3つの保険料をさしますが、賞与にかかる社会保険料(労働者負担分)の計算方法は、それぞれの保険で異なります。具体的な計算方法は次項目以下で確認しますが、ここでは、入社した月の退職や育児休業期間中などの例外的な場合を除き、基本的な仕組みを確認します。

なお、社会保険に加入している場合に社会保険料がかかりますので、そもそも社会保険に加入していない場合は、社会保険料はかかりませんが、社会保険に加入していた期間に対して支払われた賞与であっても、社会保険料がかからない場合がありますので、この点も含めて確認していきます。

2. 賞与にかかる雇用保険料

賞与にかかる雇用保険料(労働者負担分)は、賞与の支給額に雇用保険料率(労働者負担分)を乗じた額になります。雇用保険料率(労働者負担分)は、事業の種類(「一般の事業」、「農林水産・清酒製造の事業」、「建設の事業」)によって異なりますが、「一般の事業」であれば、令和5年度の雇用保険料率(労働者負担分)は「0.6%」ですので、例えば、50万円の賞与を支払った場合は「3,000円」の雇用保険料がかかります。

例)50万円の賞与を支給した場合の雇用保険料
  賞与額 × 雇用保険料率 = 500,000 × 0.6%(一般の事業)= 3,000

なお、退職後に賞与が支給された場合(例:退職日12月20日、賞与支給日12月25日)でも、当該賞与に雇用保険料がかかります。

3. 賞与にかかる健康保険料

賞与にかかる健康保険料(労働者負担分)は、標準賞与額(賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた額)に健康保険料率を乗じて計算した額の2分の1になります。ただし、標準賞与額には上限額が定められており、その額は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年度の累計額で573万円となりますので、当該上限額を超える賞与が支給された場合は、その超えた額には健康保険料はかかりません。

健康保険料率は、協会けんぽに加入している場合は都道府県ごとに、また、健康保険組合に加入している場合は健康保険組合ごとに定められていますが、例えば、協会けんぽ(東京)に加入している会社で、40歳の社員に50万円(年度の累計額573万円以下)の賞与を支払った場合は「29,550円」の健康保険料がかかります。

例)50万円の賞与を支給した場合の健康保険料
  標準賞与額 × 健康保険料率÷2 = 500,000 × 11.82% ÷ 2 = 29,550
  ※協会けんぽ・東京・40歳以上65歳未満の場合の令和5年度の健康保険料率

なお、退職した月と賞与を支給した月が同じ場合は、退職日と賞与支給日の関係により、次の取扱いになります。

  • ①退職日より後に賞与が支給された場合
    (例:退職日12月20日、賞与支給日12月25日)
    ➡ 当該賞与に健康保険料はかかりません。
  • ②退職日より前又は退職日と同日に賞与が支給された場合で、退職日が月末の場合
    (例:退職日12月31日、賞与支給日12月25日)
    ➡ 当該賞与に健康保険料はかかります。
  • ③退職日より前又は退職日と同日に賞与が支給された場合で、退職日が月末以外の場合
    (例:退職日12月30日、賞与支給日12月25日)
    ➡ 当該賞与に健康保険料はかかりません。

4. 賞与にかかる厚生年金保険料

賞与にかかる厚生年金保険料(労働者負担分)は、標準賞与額(賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた額)に厚生年金保険料率を乗じて計算した額の2分の1になります。ただし、健康保険料の場合と同様に、厚生年金保険の標準賞与額にも上限額が定められており、その額は1ヵ月あたり150万円となりますので、当該上限額を超える賞与が支給された場合でも、その超えた額には厚生年金保険料はかかりません。なお、上限額の定め方が、健康保険料の場合と異なりますので注意が必要です。

厚生年金保険料率は「18.3%」となりますので、例えば、50万円の賞与を支払った場合は「45,750円」の厚生年金保険料がかかります。

例)50万円の賞与を支給した場合の厚生年金保険料
  標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2 = 500,000 × 18.3% ÷ 2 = 45,750

なお、退職した月と同じ月に賞与が支給された場合の取扱いは、健康保険料の場合と同様です。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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