賃金等の請求権の消滅時効

2020年1月22日
賃金等の請求権の消滅時効

本年4月からの民法改正に合わせて、特別法である労働基準法における賃金等の請求権の消滅時効について、昨年より改正に向けた議論がなされてきましたが、去る2020年1月10日、厚生労働大臣が労働政策審議会に諮問した「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」について、労働政策審議会(労働条件分科会)で審議が行われ、同日、同審議会から厚生労働大臣に対して「おおむね妥当」との答申が行われました。

■労働基準法の一部を改正する法律案要綱(概要)

  1. 労働者名簿等の書類の保存期間の延長(3年→5年)

    労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間について、5年間(現行3年間)に延長する。

  2. 付加金の請求を行うことができる期間の延長(2年→5年)

    付加金の請求を行うことができる期間について、違反があった時から5年(現行2年)に延長する。

  3. 賃金請求権の消滅時効期間の見直し等(2年→5年)

    賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間を5年間(現行2年間)に延長するとともに、消滅時効の起算点について、請求権を行使することができる時であることを明確化する。

  4. 経過措置(当分の間、5年ではなく3年)

    労働者名簿等の保存期間、付加金の請求を行うことができる期間及び賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間は、当分の間、3年間とする。

  5. 施行日等(2020年4月1日)

    • 改正法の施行日は、2020年(令和2年)4月1日からとする。
    • この法律の施行前に労働基準法に規定する違反があった場合の付加金の請求期間及び賃金(退職手当を除く。)の支払期日が到来した場合の当該賃金の請求権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。
    • この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律による改正後の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

民法改正により2020年4月から一般債権に係る消滅時効が「5年」になることから、労働基準法の改正について急ピッチで検討がなされてきましたが、賃金請求権についても、労働者保護の観点から、民法より短い期間を定めることはせず、消滅時効は「5年」とされています。
但し、賃金請求権について直ちに長期間の消滅時効を定めることは、「労使の権利関係を不安定化するおそれがあり、紛争の早期解決・未然防止という賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要がある」(労働政策審議会報告書より)ことから、当分の間、現行の労働者名簿等の記録の保存期間に合わせて「3年」にすることとされています。
なお、年次有給休暇や災害補償等の請求権の消滅時効については、これまで通り「2年」を維持することとされています。
上記要綱を踏まえて、法律案が作成され、本年の通常国会に提出される予定です。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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