賃金不払残業による是正結果

2019年8月21日

厚生労働省から、平成30年度の「監督指導による賃金不払残業の是正結果」が公表されました。
これは、全国の労働基準監督署が企業への監督指導を行った結果、平成30年4月から平成31年3月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものとなります。

賃金不払残業による是正結果

1.是正企業数

是正企業数 1,768企業
(前年度比 102企業の減)

是正企業数は1,768企業です。また、上記のうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比 34企業の減)となっています。
なお、業種別では、製造業(332企業)、商業(319企業)、保健衛生業(230企業)、建設業(179企業)、運輸交通業(118企業)の順に多くなっています。

2.対象労働者数

対象労働者数 11万8,837人
(前年度比 89,398人の減)

対象労働者数は、11万8,837人です。
なお、業種別では、保健衛生業(23,981人)、製造業(23,922人)、商業(15,516人)、運輸交通業(10,355人)、教育研究業(7,404人)の順に多くなっています。

3.支払われた割増賃金合計額

支払われた割増賃金合計額 125億6,381万円
(前年度比 320億7,814万円の減)

支払われた割増賃金合計額は、125億6,381万円です。
なお、業種別では、保健衛生業(27億2,010万円)、商業(18億6,407万円)、製造業(17億4,632万円)、教育研究業(13億7,392万円)、建設業(9億742万円)の順に多くなっています。
また、支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円です。

4.監督指導の事例

監督指導の事例として、次のものが紹介されています。

小売業
  • 残業をしている労働者がいるにもかかわらず、管理者が労働者全員のタイムカードを終業時刻に合わせて打刻しているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
  • 会社は、タイムカードにより労働時間を管理していたが、その記録と入退館記録との間にかい離が認められたことから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
金融業
  • 割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
  • 会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離が認められたことから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
小売業
  • 過重労働解消相談ダイヤルに寄せられた違法な長時間労働が行われているとの労働者の家族からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
  • 会社は、自己申告(労働者が残業申請書を提出し、上司が承認)により労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録と警備システム記録とのかい離から、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
電気機械
器具製造業
  • 残業時間の過少申告が常態化しているなど、労働時間管理について不適切な取扱いがあるとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
  • 会社は、自己申告(パソコン上で労働者が時間外労働申請を行い、上司が承認)により労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録とのかい離などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

上記事例のように、自己申告制の運用が不適切なために労働時間が適正に把握されず未払い賃金が生じているケースは、一般的にも多くみられます。

ぜひ、この機会に、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に記載されている労働時間の考え方や自己申告制により労働時間を把握する場合の留意点等を改めて確認の上、自社の労働時間管理に不備がないか点検されてみてはいかがでしょうか。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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