育児介護休業法の改正(育児関係)

2016年9月21日

今回は、前回(2016年8月24日付「育児介護休業法の改正(介護関係)」)に引き続き、2017年1月1日から改正施行される育児介護休業法の概要のうち育児関係をご紹介します。

改正の概要

■子の看護休暇の取得単位の見直し
これまで子の看護休暇の取得単位は1日とされていましたが、介護休暇と同様に、子の世話を行うために丸一日休暇を取得する必要がない場面も想定されるため、柔軟性を高め半日単位でも取得が可能となります。
なお、半日とは1日の所定労働時間の2分の1をさしますが、労使協定で定めることにより、1日の所定労働時間の2分の1以外の半日とすることもできます。この考え方も介護休暇と同様です。

※「子の看護休暇」とは、負傷し又は疾病にかかった小学校就学の始期に達するまでの子の世話を行うため、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるため、1年に5日(子が2人以上いる場合は年に10日)付与される休暇をいう。

■対象となる子の範囲の拡大
育児休業等の対象となる子の範囲が拡大され、次に掲げる者も含まれるようになります。
・特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子
・養子縁組里親に委託されている子
・当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められるにもかかわらず、実親等が反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子

■有期契約労働者の取得要件の緩和
育児休業の取得が可能な有期契約労働者の要件について、わかりづらかった部分(現行の要件の②)が削除され、また、育児休業の取得促進を図るため、次の通り緩和されます。

[現行の要件] ①~③のすべてに該当する者
①1年以上の雇用実績があること
子が1歳になった後も引き続き雇用が見込まれること
③子が2歳になるまでの間に雇用関係が終了することが明らかでないこと

[新しい要件] ①~②のすべてに該当する者
①1年以上の雇用実績があること
②子が1歳6ヵ月になるまでの間に雇用関係が終了することが明らかでないこと

■育児休業等に関するハラスメント防止措置
育児休業や介護休業等の制度の申出や利用に関する上司や同僚の言動により就業環境が害されることがないよう、会社は、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備する等の必要な措置を講ずる必要があります。これらの措置は派遣先にも求められます。
講ずべき措置の内容については指針に次の点が示されていますので、その内容を踏まえて対応の検討が必要となります。
・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・相談(苦情を含む)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
・職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置等

仕事と家庭の両立は、社員にとっても会社にとっても非常に重要な問題です。
この機会に、会社として何をすべきか、何ができるかを検討し、積極的に社員に発信していくとよいでしょう。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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