育児介護休業法の改正(介護関係)

2016年8月24日

育児や介護を理由に意に反して離職することがないよう、仕事と家庭の両立を支援するために、育児介護休業法が改正され、2017年1月1日から施行されます。改正に伴い、本年末までに、育児介護休業規程の改定や労使協定の締結などの準備が必要となります。
今回は、その準備にあたり確認が必要となる改正の概要のうち介護関係をまとめてご紹介します。

改正の概要

■介護休業の分割取得
これまでは介護休業の取得は、対象家族※11人につき、要介護状態※2に至るごとに原則1回、通算93日以内で可能でしたが、改正後は、対象家族1人につき、最大3回まで、通算93日以内で可能となります。
これにより、同一の要介護状態においても、通算93日以内であれば、介護休業を分割して複数回取得できるようになります。介護開始から介護終了までの様々な段階で休業が必要な場面が想定されるため、介護の始期、終期、その間の期間にそれぞれに対応する観点から3回取得できるように設定されています。なお、回数は改正前の分も通算されます。

※1「対象家族」とは、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、父母及び子、配偶者の父母、労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫をいう。
※2「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体や精神の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とするような状態をいう。

■対象家族の拡大
これまでは介護休業等の対象となる家族(対象家族)のうち、祖父母、兄弟姉妹及び孫については、同居しかつ扶養していることが要件となっていましたが、世帯構造の変化等を踏まえ同居していない親族の介護が必要な場面も想定し、当該家族についての同居及び扶養の要件が廃止されます。

■介護休暇の取得単位の見直し
これまでは介護休暇※3は1日単位での取得としていましたが、介護等のため丸一日休暇を取得する必要がない場面も想定されるため、柔軟性を高めて改正後は半日単位でも取得が可能となります。 ここでいう半日とは1日の所定労働時間の2分の1(例:1日の所定労働時間が8時間の場合の半日は4時間となる)をいいますが、労使協定で定めることにより、1日の所定労働時間の2分の1以外を半日とすることもできます(例:午前と午後をそれぞれ半日とする)。

※3「介護休暇」とは、対象家族の介護その他の世話をするため1年に5日(対象家族が2人以上いる場合は年に10日)付与される休暇をいう。

■短時間勤務等の措置の期間の見直し
これまでも働きながら家族を介護することができるよう短時間勤務等の措置※4の導入が義務付けられていましたが、対象となる期間は、介護休業と合わせて93日以内とされていました。改正後は、日常的な介護のニーズに対応するため、介護休業とは独立した別の期間とし、利用開始から3年間で2回以上の利用が可能となります。

※4「短時間勤務等の措置」とは、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、介護サービス利用の場合の費用助成、その他の措置といずれか一つ以上の措置を講ずることが義務付けられている。

■所定外労働の制限(残業の免除)の新設
育児には既に導入されている仕組みですが、フルタイムで働きながら日常的な介護に対応するため所定外労働の制限(残業の免除)が新設されます。 この仕組みは、対象家族について介護の必要がなくなるまで利用可能ですので、従業員から申出があった場合は、介護をしている期間は残業を命ずることはできません。

■有期契約労働者の取得要件の緩和
介護休業の取得が可能な有期契約労働者は、これまでは、1年以上の雇用実績があり、かつ、介護休業を開始した日から「93日+1年」を経過する日までに雇用契約が終了することが明らかでない者とされてきましたが、改正後は、1年以上の雇用実績があり、かつ、介護休業を開始した日から「93日+6ヵ月」を経過する日までに雇用契約が終了することが明らかでない者とされ、取得要件が緩和されます。

上記の他、通達の見直しが行われ、「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」が緩和される予定です。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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