労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について~厚労省通達~

2016年4月14日

 厚労省は、平成28年2月12日付けで、過労死等事案での長期未決事案の削減と的確な労災認定事務について、その改善を目的とした通達を出しました。下記は本通達の一部となりますが、『的確な労災認定に向けた調査上の留意点~的確な労働時間の把握』は、各企業においてもよく理解しておく必要があるものと言えます。


〇的確な労災認定に向けた調査上の留意点

(1)的確な労働時間の把握
 本通達上では「過労死等事案においては、実労働時間の把握が重要であることから、タイムカード等の実労働時間と直結する資料が得られない場合については、同僚、取引先や家族からの聴取に加えて、監督担当部署と協議しつつ、労働時間の迅速・適正な把握を行うこと」と以下のような例を示しています。

  • 事業場建物への入退館記録
  • パソコンによる作業履歴等の分析
  • IC定期券等の乗車記録の確認を行う等

  •  これらは、一部現在も行われている労働時間の把握方法ではありますが、『IC定期券等の乗車記録の確認』などは、本通達後はより積極的に活用されてくるものと思われます。

     また、さらに通達では、「行政事件訴訟において、①事業場の始業時刻より相当程度早い時刻に出勤している事実が認められるにもかかわらず、その時間帯における就労状況について関係者への確認を十分に行わず、一律に始業時刻以降を労働時間としていたもの、②運送業務に従事する労働者の運送先から事業場までの帰路の時間を労働時間に算入していなかったもの、などの労働時間の把握が不十分な事案がみられたことから、就労状況について調査を尽くした上で、実態として労働していることが認められた場合には、労働時間として的確に反映させるなど、労働時間の適正な把握に努めること。」と通知され、現在では曖昧となっている可能性のある“労働時間であるかもしれない時間”についてもしっかりと確認がなされていくものと考えられます。

     言うまでもありませんが、企業側としますと、過労死等が発生する原因となる長時間労働を解消することはもちろん、従来以上に適切に労働時間管理を行う必要があります。
     具体的には、健康障害等を引き起こす長時間労働を発生させないよう、従業員教育による意識改革、業務遂行方法や業務配分の見直し、人員の補充、休暇等の効果的な活用など、労働時間を削減するようにコントロールしていくことが重要です。

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