【均等・均衡待遇への対応状況】
法改正からまもなく3年

2023年1月12日
【重要】求人情報は的確に表示することが義務付けられています

【5分で納得コラム】今回のテーマは「均等・均衡待遇への対応状況」についてです。

1. 「均等・均衡待遇」とは

「均等・均衡待遇」とは、いわゆる“同一労働同一賃金”のことで、同一企業内における“通常の労働者”(正社員)と“短時間・有期雇用労働者”(非正社員)との間の不合理な待遇差などの解消を求めるものです。

このうち、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、「職務の内容(業務の内容及び責任の程度)」(①)と「職務の内容・配置の変更の範囲」(②)が同じ場合に、短時間・有期雇用労働者であることを理由としてそれぞれの待遇について差別的な取扱いを禁止するものを「均等待遇」といい、①、②及び「その他の事情」(③)のうち、それぞれの待遇の性質・目的を考慮して不合理な待遇差を設けることを禁止するものを「均衡待遇」といいます。

「均等・均衡待遇」については、旧パートタイム労働法や改正前の労働契約法でも規定されていましたが、改正後は短時間労働者・有期雇用労働者の双方を対象にした「パートタイム・有期雇用労働法」において追加・明確化されるなどして、大企業には2020年4月1日から、中小企業には2021年4月1日からその対応が求められています。

2. 「見直しを行った」企業の割合は28.5%

2022年11月に公表された「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」(厚生労働省)によれば、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間の「不合理な待遇差の禁止」の規定に対応するため「見直しを行った」企業の割合(規模総計)は28.5%で、「待遇差はない」企業の割合28.2%と合わせると6割近くになっています。また、企業規模別では、以下グラフでみられるとおり、企業規模が大きいほど見直しが進んでいる状況がみられます。

イメージ

※「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」のデータを基に作成

また、見直しの「実施内容(複数回答)」(規模総計)は以下の内容になっており、パートタイム・有期雇用労働者だけでなく、正社員の待遇や職務内容等を見直した企業もみられます。

イメージ

3. 「見直した待遇」は「基本給」が45.1%

待遇の見直しを行った企業における「見直した待遇(複数回答)」の内容は、下表のとおり、規模総計では「基本給」が45.1%、「有給の休暇制度」が35.3%、「賞与」が26.0%等になっています。

パートタイム・有期雇用労働者の見直した待遇

イメージ

※「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」のデータを基に作成

また、企業規模別では、500人以上及び30~49人の規模では「有給の休暇制度」を、100~499人の規模では「その他の手当」を、50~99人及び5~29人の規模では「基本給」を見直した割合がそれぞれ最も多くなっています。

4. 今後の対応

「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されてあと数ヵ月で3年が経過します。

同法18条には、「厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」とあり、今後、均等・均衡待遇への対応に関する行政指導が強化されていくことが見込まれます。

均等・均衡待遇への対応を行っていない企業においては、今回ご紹介した「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」の結果なども踏まえつつ、早めに自社の状況に応じた見直しが求められます。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

≪岩楯めぐみ氏の最近のコラム≫

※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

コラム一覧に戻る