コロナ禍と雇用保険財政

2021年9月8日

厚労省の発表によると、2021年8月25日時点で支給が決定している雇用調整助成金(以下「雇調金」)について、2020年4月からの給付決定累計額が約4兆3千億円となっています。

雇調金とは、従業員に休業補償などを行う事業主に支給することで、労働者の失業を予防することを目的とする助成金です。コロナ禍における雇用を支えるため要件緩和が進められ、支給額が急増しています(リーマンショック翌年2009年度の支給額は6,536 億円)。

この雇調金の財源は、労使が負担する雇用保険料のうち「雇用保険二事業」に充てるための保険料(事業主のみ負担・料率は一般事業で3/1000)です。

雇用保険料率内訳(一般事業)

失業・育児休業給付 雇用保険二事業
労働者3/1000 事業主6/1000
事業主3/1000 事業主3/1000
求職者給付
就職促進給付
教育訓練給付
雇用継続給付
育児休業給付金
雇用安定事業
(雇用調整助成金)
能力開発事業

コロナ禍の影響を受け、保険料のみで対応できなくなった雇調金の財源を補うため、失業給付のための積立金からの借り入れや一般会計からの繰り入れも行われてきましたが、2019年度に約4.5兆円(失業給付等用)・約1.5兆円(二事業用)あった積立金が2020年度にはそれぞれ1,722億円・864億円まで落ち込み、底をつきそうな状況となっています。

失業給付の積立金(青)・二事業の積立金(橙)

コロナ禍前は財政状況の良かった雇用保険事業。多額の積立金を背景にここ数年は保険料率の引き下げや国庫負担の減額を進めてきましたが、2022年度以降の雇用保険料率の引き上げが検討されはじめていると報じられています。

今後の議論に注目が集まります。

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