育児介護の両立支援の「見直し」について
テレワークの活用促進など

2023年8月24日
育児介護の両立支援の「見直し」についてテレワークの活用促進など

【5分で納得コラム】今回のテーマは「育児介護の両立支援の見直しについて」です。

1. 2022年の出生数は77万人

厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」等によれば、下のグラフのとおり、日本の出生数は右肩下がりで減少し、2022年は77万人と1985年の半数程度で、少子化に歯止めがかからない状況が続いています。

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このような状況の中、社会経済の活力を維持・向上させるべく、多様な人材が充実感をもって 活躍できる環境の整備に向けて検討がなされています。

2. 育児関連の見直し

育児関連については、仕事と育児の両立支援に向けて、現在、次の点などの検討がなされています。

3歳になるまで

現行の育児休業制度や短時間勤務制度だけでなく、特に女性が円滑にキャリア形成できるように配慮し、テレワークや短時間勤務制度の柔軟化により、フルタイム勤務に近い形態で働けるような柔軟な制度利用を促す

例)テレワークを努力義務とする
例)1日6時間の短時間勤務措置に加えて、他の勤務時間制度も併せて設定することを促す
例)現行の子の看護休暇の取得目的に、子の行事(入園式、卒園式など)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等を追加する
例)現行の勤続6ヵ月未満の労働者について、労使協定により子の看護休暇取得対象から除外することができる仕組みを廃止する
など

3歳から小学校就学前まで

男女ともに必要に応じて両立支援制度が活用できるよう、柔軟な働き方の選択肢を増やすことや残業をしない働き方を可能とする

例)短時間勤務制度、テレワーク、始業時刻の変更等、新たな休暇の付与等の中から2以上の選択肢を設けることを義務化する(労働者はこの中から1つを選ぶ)
なお、選択肢を設ける際には、過半数労働組合等の意見聴取の機会を設ける
例)所定外労働の制限(残業の免除)を義務化する
など

小学校就学以降

必要に応じてスポット的に家庭のことに対応できる休暇制度を設ける

例)子の看護休暇の取得対象を小学校3年生まで延長する
など

その他

例)男性の育児休業取得状況の公表義務を、現行の常時雇用する労働者数が「1000人超」から「300人超」の事業主へ拡大する
など

3. 介護関連の見直し

介護関連については、介護離職を防止し、仕事と介護の両立支援に向けて、現在、次の点などの検討がなされています。

仕事と介護の両立支援制度の情報提供や、制度を利用しやすい雇用環境を整備する

例)家族の介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合に、仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を個別に周知する。また、労働者が必要な制度を選択できるよう働きかける
例)効果的な時期(40歳など)に、労働者に対して、両立支援制度の情報を記載した資料を配付するなどの情報提供を一律に行う
例)事業主が介護保険制度や両立支援制度に関する社内セミナーや研修の開催、相談窓口の設置など雇用環境の整備を行う
など

介護期の制度を見直す

例)現行の勤続6ヵ月未満の労働者について、労使協定により介護休暇取得対象から除外することができる仕組みを廃止する
例)介護期に導入することが義務化されている選択的措置のひとつにテレワークを加える
など

少子高齢化の日本においては、人手不足が続くことは避けられない状況にあります。企業においては、仕事と育児・介護の両立を可能とする体制がますます重要になりますので、組織体制や仕事の進め方などについて継続的に検討しつつ、可能なものは早めに試行するなどして、将来を見据えた体制への変革が求められます。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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