【過労死等の労災補償状況】支給決定件数、令和元年度対比で8割増
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「過労死等の労災補償状況」についてです。
内容
【過労死等の労災補償状況】支給決定件数、令和元年度対比で8割増
1. 令和6年度の「過労死等の労災補償状況」
厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した「脳・心臓疾患」や仕事による強いストレスが原因で発病した「精神障害」の状況に関する労災保険の請求件数などを取りまとめて「過労死等の労災補償状況」として毎年公表していますが、令和6年度は以下のとおりとなっており、請求件数、決定件数、支給決定件数のいずれも前年度より増加しています。
令和6年度の過労死等に関する請求件数 4,810件(前年度比 212件増) 決定件数 4,312件(前年度比1,033件増) 支給決定件数 1,304件 (前年度比 196件増) さらに遡って令和元年度以降の支給決定件数をみると、以下のグラフのとおり年々増加しており、令和6年度は令和元年度に比べて8割増になっています。また、支給決定件数を「脳・心臓疾患」「精神障害」に区分してみると、令和元年度に比べて、「脳・心臓疾患」については15%程度の増加ですが、「精神障害」については2倍以上と大幅に増加していることがわかります。
過労死等に関する支給決定件数
※「過労死等の労災補償状況」(厚生労働省)を基に作成
2. 精神障害の関与出来事は令和6年度もパワハラが最多
令和6年度の精神障害に関する労災の支給決定件数1,057件について、精神障害の発病に関与したと考えられる事象を分類した「具体的な出来事」をみると、上位10項目は下表のとおりとなっています。過去5年間において同様の状況が続いていますが、最も多い具体的な出来事は「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」になっています。
なお、「具体的な出来事」は、令和5年9月1日付け基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に定められた区分によるものです。
令和6年度・精神障害に関する労災支給決定されたものの具体的な出来事上位10
具体的な出来事 件数 割合 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた 224件 21.2% 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった 119件 11.3% 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた 109件 10.3% セクシュアルハラスメントを受けた 105件 9.9% 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした 87件 8.2% 特別な出来事 78件 7.4% 1ヵ月に80時間以上の時間外労働を行った 51件 4.8% 業務により重度の病気やケガをした 48件 4.5% 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた 44件 4.2% 上司とのトラブルがあった 39件 3.7% ※厚生労働省「過労死等の労災補償状況」を基に作成
3. 11月は「過労死等防止啓発月間」
勤労感謝の日がある11月は、毎年「過労死等防止啓発月間」となっています。当該期間中は、周知・啓発を目的に各都道府県において「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催されるほか、以下の「過重労働解消キャンペーン」が予定されています。
1 労使の主体的な取組促進
・使用者団体や労働組合に対する厚生労働大臣名による協力要請2 労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問等
・長時間労働削減に向けて積極的に取り組んでいる企業への都道府県労働局長の職場訪問等
・長時間労働削減に向けた取組事例の収集・紹介3 重点監督の実施
・長時間労働が行われていると考えられる事業場に対する重点的な監督指導の実施4 過重労働相談受付集中期間の設定
・過重労働相談受付集中期間11/1(土)から11/7(金)(11/2(日)、11/3(月・祝)を除く。)の設定
・過重労働に係る相談・労働基準関係法令違反が疑われる事業場の情報の積極的な受付の実施5 特別労働相談の実施
・11/1(土)に下記の電話による特別労働相談の実施
*過重労働解消相談ダイヤル
電話番号:0120(794)713(フリーダイヤル なくしましょう 長い残業)
実施日時:令和7年11月1日(土)9:00~17:00
※労働基準監督官が相談対応
*労働条件相談ほっとライン
電話番号:0120(811)610(フリーダイヤル はい!労働)
実施日時:令和7年11月1日(土)9:00~21:00
※労働条件相談ほっとラインの相談員が相談対応6 過重労働解消のためのセミナー開催
・10月~1月に「過重労働解消のためのセミナー」や「業務効率化セミナー」の実施この機会にセミナーなどを活用して過重労働防止に向けた基本ルールなどを再確認した上で、自社の状況を点検してみてはいかがでしょうか。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所)、「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会)、「労災の法律相談〔改訂版〕」(共著/青林書院)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社)、「労務トラブルから会社を守れ!労務専門弁護士軍団が指南!実例に学ぶ雇用リスク対策18」(共著/白秋社)など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

