2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金

2025年10月9日
2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金

【5分で納得コラム】今回のテーマは「2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金」です。

2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金

1. 教育訓練給付金

労働者の主体的な能力開発やキャリア形成を支援して雇用の安定と就職の促進を図ることを目的に、雇用保険には被保険者に教育訓練給付金を支給する仕組みがあります。

具体的には、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、その受講費用の一部を支給する仕組みで、対象となる教育訓練のレベルなどに応じて、雇用の安定・就職の促進を支援する「一般教育訓練給付金」、労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成を支援する「特定一般教育訓練給付金」、労働者の中長期的なキャリア形成を支援する「専門実践教育訓練給付金」の3つがあります。
そして、2025年10月からはこれらに加えて「教育訓練休暇給付金」が新設されました。

2. 教育訓練休暇給付金

教育訓練休暇給付金は、労働者が在職中に自発的に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、求職者給付の基本手当(いわゆる失業保険)に相当する給付を行う制度で、具体的には以下のとおりです。


【支給対象者】
雇用保険の一般被保険者のうち、次の①②の両方を満たす者になります。

①原則として教育訓練休暇開始前2年間に12ヵ月以上の被保険者期間があること
 ※被保険者期間は、教育訓練休暇開始日の前日を離職日とみなして、原則として11日以上の賃金支払基礎日数がある月を1ヵ月として算定します。

②教育訓練休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
 ※過去に求職者給付の基本手当や教育訓練休暇給付金、育児休業給付金、出生時育児休業給付金を受けたことがある場合は、通算できない期間が生じる場合があります。


【受給期間・給付日数】
受給期間(給付を受けることができる期間)は、教育訓練休暇開始日から起算して原則として1年間です。
また、給付日数は、求職者給付の基本手当の考え方と同じで、原則として雇用保険に加入していた期間に応じて決まり、その給付日数は下表のとおりです。なお、給付される日額は、求職者給付の基本手当の算定方法と同様に、原則として教育訓練休暇開始日の前日を離職日とみなして前6ヵ月間の賃金日額に応じて算定されます。

加入期間 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
所定給付日数 90日 120日 150日

【対象となる休暇】
対象となる休暇は、次の“すべて”を満たす休暇になります。

①就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇であること

②労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇であること

③次に定める教育訓練等を受けるための休暇であること
•学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校
•教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
•職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)

3. 休暇制度導入の検討を

教育訓練休暇給付金を受けるためには、まずは被保険者が雇用されている会社に、当該給付金の対象となる休暇制度がなければなりません。給付金申請時には添付資料として就業規則等の提出も求められていますので、当該休暇制度の導入について検討し、導入することとされた場合は、要件を満たす形で就業規則等への定めが必要になります。なお、当該制度を導入するか否かは強制ではなく任意となります。

また、教育訓練休暇給付金の支給を受けた場合は、教育訓練休暇開始日より前の被保険者期間や雇用保険に加入していた期間はリセットされ通算できなくなり、原則として一定期間は求職者給付の基本手当等の被保険者期間を要件とする給付金を受給できなくなりますので、実際に当該給付金の申請をする際には、従業員がその点を正しく理解しているか確認した方がよいでしょう。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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