令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安」です。
令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安
1. 令和7年度の改定の目安
毎年10月に改定される地域別最低賃金額については、中央最低賃金審議会から示される改定の目安を踏まえて、地方最低賃金審議会で調査審議を行い、その答申を受けて各都道府県労働局長が決定しますが、去る8月4日に中央最低賃金審議会から令和7年度の改定の目安が示されました。
改定の目安は、都道府県の経済実態に応じてABCの3ランクに区分されて提示されますが、令和7年度は、下表のとおり、A・Bランクはともに63円、Cランクは64円となっています。ランク 都道府県 金額 A 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 63円 B 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 63円 C 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 64円 仮に上表の目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の最低賃金額の全国加重平均は1,118円となります。なお、この場合の全国加重平均の上昇額は63円となり、昨年度の51円をも超えて昭和53年度に目安制度が始まって以降の最高額となっています。
ちなみに、地方最低賃金審議会で審議した上ですでに答申がなされつつありますが、上表の改定の目安を10%以上上回る引上げ額で答申がなされている場合もありますので、最終的な最低賃金額は9月上旬頃までに公表される各都道府県の労働局や厚生労働省のWEBサイトで確認が必要です。2. 東京における10年間の推移
最も高い最低賃金額の東京の10年間の推移は、以下のグラフのとおりです。
◇資格確認書のイメージ
東京労働局では令和7年度の引上げ額を63円とする方向で手続きが進められていますが、最低賃金額が1226円となった場合は、10年前の平成27年(2015年)の907円に比べると319円増で、35%の引上げに留まっています。
3. 初任給20万円以上が必須に!?
月給者の場合、最低賃金額以上となっているかの確認は、次の算式で行います。
( 月額の賃金÷1年間における月平均所定労働時間 ) ≧ 最低賃金額
なお、上記の「月額の賃金」には、次の賃金は含まれません。
・ 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
・ 時間外労働、休日労働及び深夜労働の手当
・ 臨時に支払われる賃金(例:結婚祝金)
・ 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与)東京の最低賃金額が1226円となった場合は、1年間における月平均所定労働時間にもよりますが、月額の賃金は20万円以上になります。
例)1日8時間、年間の所定労働日数245日(年間休日120日)の場合
245日 × 8時間 ÷ 12月 × 1226円 ≒ 200,247円例)1日8時間、年間の所定労働日数260日(年間休日105日)の場合
260日 × 8時間 ÷ 12月 × 1226円 ≒ 212,507円採用難等からすでに新卒社員の賃金額を大幅に引上げている会社もみられますが、念のため、最低賃金額を下回ることがないか自社の状況を確認してみましょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。