新卒者の3分の1以上、3年以内に離職

2025年12月25日
新卒者の3分の1以上、3年以内に離職

【5分で納得コラム】 今回のテーマは「新卒者の3分の1以上、3年以内に離職」です。

新卒者の3分の1以上、3年以内に離職

1. 総人口の減少・生産年齢人口割合の低下

厚生労働白書によれば、日本の総人口は、2008年(平成20年)の1億2,808万人をピークに減少に転じ、2050年(令和32年)には1億469万人になると推計されています。よって、42年間に2,339万人減少する計算になりますが、これは、2025年9月1日現在の埼玉県(約732万人)、千葉県(約627万人)及び神奈川県(約921万人)の3県を合わせた人口(約2,280万人)を超える規模であり、具体的にイメージすると推計された人口減少の規模に驚かされます。

また、生産活動の中心的な担い手である生産年齢人口(15歳~64歳の人口)の割合は、少子高齢化の進行により、1992(平成4)年の69.8%をピークに低下し、2050年(令和32年)にはは52.9%になると推計されています。近年、求人をだしても期待するほどの応募がないという声をよく耳にしますが、総人口の減少と生産年齢人口割合の低下の2つが重なっていますから当然といえ、企業にとっての採用環境は今後も厳しい状況が続くことが想定されます。

2. 新卒者の3年以内の離職率

このような環境下で、縁があって入社した新卒者の離職率はどの程度なのでしょうか。

2025年10月に厚生労働省から公表された令和4年3月に卒業した「新規学卒就職者の離職状況」によれば、就職後3年以内の離職率は、中学卒54.1%(前年差+3.6ポイント)、高校卒37.9%(前年差-0.5ポイント)、短大等卒44.5%(前年差-0.1ポイント)、大学卒33.8%(前年差-1.1ポイント)となっており、最も離職率が低い大学卒でも3分の1が3年以内に離職している状況にあります。なお、1年目、2年目、3年目のそれぞれの離職率の割合は以下のグラフのとおりです。

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さまざまな事情がありますから一定程度の離職はやむを得ないとしても、人手不足の中で離職率を低下させるための工夫が必要といえます。

3. 取組事例集

2024年9月に厚生労働省から公表された「令和5年若年者雇用実態調査」によれば、若年労働者(満 15~34歳の労働者)の「初めて勤務した会社をやめた理由(3つまでの複数回答)」は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が28.5%、「人間関係がよくなかった」が26.4%、「賃金の条件がよくなかった」が21.8%、「仕事が自分に合わない」が21.7%の順となっています。実際に勤務しなければ認識し得ない事項に起因して退職するケースももちろんありますが、入社前にイメージしていたものとのギャップに起因して退職するケースも多くあるように思います。

2025年3月に厚生労働省が作成した「人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集」には、次のような採用における取組の好事例が紹介されています。

(例)

・求人票による必要な情報の網羅性、企業ミッションによる訴求
(入社3年後時点の定着率は9割弱)

・面接で社風やキャリアパスをしっかり伝え、安心感を醸成
(入社3年後時点の定着率は85%程度)

・人事制度の開示、入社後の手厚い研修で求職者の不安を払拭
(入社3年後時点の定着率は8割以上)

・紹介を受けた高レベルの人材に、待遇・福利厚生を面接で説明
(定着率は、令和5年度の病院部門では87%、介護部門では66%)

・エンジニアの希望する働き方に見合った職場を提示
(入社3年後時点の定着率は90%

・会社の業績や理念を強調、業務上のネガティブな面を開示
(入社3年後時点の定着率は、エリアマネージャーは9割程度)

・面接で労働環境のポジティブ・ネガティブな情報の理解を促進
(入社3年後時点の定着率は9割以上)

・面接前のカジュアル面談の段階で双方の意思確認を実施
(入社3年後時点の定着率は96~97%

・過去の不祥事から現在の職場環境、カルチャーまでを広く開示
(中途採用入社の3年後定着率は94%

・面接官研修により、職場環境等の開示・アピールを強化
(入社3年後時点の定着率は80%

・事業の社会的意義や具体的な事業内容のアピール
(入社3年後の定着率は9割以上)

事例の中には、情報開示の工夫等により定着率が95%を超えているものもあるようですので、それらも参考に自社の取組みを検証してみてはいかがでしょうか。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所)、「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会)、「労災の法律相談〔改訂版〕」(共著/青林書院)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社)、「労務トラブルから会社を守れ!労務専門弁護士軍団が指南!実例に学ぶ雇用リスク対策18」(共著/白秋社)など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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