熱中症対策2025年6月から義務化

2025年5月29日
熱中症対策2025年6月から義務化

【5分で納得コラム】今回のテーマは「熱中症対策2025年6月から義務化」です。

熱中症対策2025年6月から義務化

1. 熱中症による死亡災害

今年の夏は全国的に平年より気温が高く、早い時期から厳しい暑さになる日が多くなることが見込まれていますが、暑い夏に注意しなければならないのが熱中症です。熱中症は、高温多湿な環境下で発汗による体温調節等がうまく働かなくなって体内に熱がこもった状態となり、めまい、倦怠感、吐き気、痙攣などの症状をもたらします。また、適切な処置がなされなければ、死に至る可能性もあります。

法令では、事業者に、多量の発汗を伴う作業場には、労働者に与えるために塩・飲料水を備えることを義務付けていますが、厚生労働省の発表によれは、熱中症による死亡災害は2年連続で年間30人を超え、労働災害による死亡者数全体の約4%を占めています。また、熱中症死亡災害(令和2年から令和5年)の分析によれば、その原因のほとんどは「初期症状の放置や対応の遅れ」となっています。

2. 熱中症対策を義務化

このような状況の中、労働安全衛生規則の改正により、2025年6月1日から事業者に熱中症対策が義務付けられます。これにより、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、熱中症による健康障害の疑いがある者の早期発見や重篤化を防ぐために必要な対応が必須になります。なお、ここでいう「熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、以下のものをいいます。

暑さ指数(WBGT)28度以上又は気温31度以上の環境下で
連続1時間以上 又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業

上記の「暑さ指数(WBGT)」は、人体と外気との熱のやり取りに着目して、気温、湿度、日射・輻射、風の要素を基に算出されたもので、熱中 症リスクを表す指標として使用されています。暑さ指数(WBGT)は、湿球温度計、黒球温度計又は乾球温度計を使用して、それぞれの測定値を基に以下の方法により算出されますが、WBGT測定機器も市販されています。

WBGTの算出方法

・屋外のWBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
・屋内のWBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

3. 事業者が対応すべき事項

熱中症対策として事業者が対応すべき事項は、以下の①及び②です。

① 報告体制の整備と周知

事業者は、異常を早期に発見するため、以下の場合にその旨を報告させるための体制(連絡先や担当者)をあらかじめ定めて、作業関係者に周知させなければなりません。

✓作業に従事する者が熱中症の自覚症状がある場合
✓作業に従事する者が熱中症による健康障害を生じた疑いがあることを他の者が発見した場合

② 必要な措置及び実施手順の策定と周知

事業者は、熱中症の症状の悪化を防止するため、必要な措置の内容や実施手順を作業場ごとにあらかじめ定めて、作業関係者に周知させなければなりません。

◇必要な措置
・作業の中止
・身体の冷却
・医療機関への搬送
・事業場における緊急連絡網
・緊急搬送先の連絡先及び所在地 等

熱中症は梅雨入り前の5月頃から発生するといわれていますので、厚生労働者から例示されている以下のフローなども参考に、作業場ごとに早めに対応ルールを定めて関係者に周知させましょう。

イメージ

*「職場における熱中症対策の強化について」(厚生労働省)より一部抜粋

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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