【ナレッジセンター】
有期雇用契約における無期転換制度
他社はどうする?「人事担当者が感じた9つの疑問・第2回」

2017年3月7日

平成30年4月に本格運用を控えている 「有期雇用契約における無期転換制度」 。
正社員との差別化や脱法行為とみなされない雇止めなど、「なにをどこまでやるべきか?」判断がつかず、多くの企業が方針検討段階のままでいるのが実情です。 今回は 「無期転換制度の対策」 をテーマに、様々な企業の人事担当者でおこなった意見交換会から、各社が感じている疑問とそれに対する各社の見解について、3回に分けてご紹介します。

第1回では対象となる従業員への説明方法や、従業員にとってのメリット・デメリット、制度見直しをする際の注意点について、実務に携わる各企業の人事担当者の見解をご紹介しました。
第2回は「契約期間のカウントに対する疑問点」「退職届が未回収になりがちな場合の対策」「次回更新無しと契約書に記載する際の注意点」について、ご紹介します。

Q-4 繁閑に応じて、契約期間をカウントしないようにするには?

●医療事務サービス業
繁閑が激しく、実務上、1年の内、空白の期間が1ヶ月ある場合があります。契約期間は1年としていますが、今後は、空白期間は契約せずに、三ヶ月契約などに変更することを検討しています。これであれば、休みが二ヶ月になればクーリングとなり、契約期間には通算されませんので、無期雇用の対象にしないで済むと考えています。ただし、クーリングを使う場合は、働かなくていい期間は契約を切るなどの事務作業が増えることになるため、業務量・効率化の観点から検討する必要があります。

●飲食業
弊社でも1年を通じてみた場合、繁閑の差が激しいため、対策としては、直雇用でも有期雇用でもなく、業務委託とし、依頼したい時だけ業務を発注することも検討しています。ただし、税金の控除などなく、確定申告などをしてもらうことになりますので、事務作業への影響も考慮した上で対応を考えたいと思っています。

●飲食業
繁閑対策として、契約を一度切るようにしています。仕組みとしては、アルバイトなどは、長く出勤しなければ退職していただくといった就業規則を設けています。

通算で契約期間をカウントする際に重要なことは、勤務実績ではなく、あくまでも契約内容がベースとなるということです。つまり、勤務実績がなくても、無期転換が適用されるケースがあることを注意しなくてはなりません。
例えば、病院に期間雇用されている医師で、研究のために大学で研修をおこなっているケースですと、研修中の給与が少ないために、研修の無い期間は病院で勤務をしている場合があります。勤務日数が多い月もありますが、無期転換制度は、あくまでも契約をベースにするため、このようなケースであっても、雇用契約1ヶ月とはカウントしません。勤務時間の実態ではなく、契約内容を事前に確認しておくことが必要です。
また、雇用契約で結ばれている契約が、反復継続しているかどうかも注意が必要です。
反復継続しているのであれば、無期転換が適用されます。

尚、通算契約期間を計算する上で、契約最後の月が31日ある場合は、応当日の前々日で30日が経過してしまいます。この場合は、一ヵ月繰り上げとしても問題はありません。

Q-5 パートやアルバイトの退職届が未回収になりがちです。他社ではちゃんと回収できてますか?また、どんな対策が考えられるでしょうか?

●事務サービス業
弊社では、契約満了は「退職届」、途中退職は「退職願」とし、現場には退職稟議と退職願をすぐに提出させるようにしていますが、実態は、退職願の回収忘れが問題になっています。
いつまでも回収できないと30日間給料を払うことになってしまいますし、人事の工数も、そこにとられてしまい、リスクになっています。

●サービス業
弊社でも、アルバイトなどの退職届が出てこないケースは多いです。結果的に、書類回収をするのが不可能と なってしまい、どこまで手続きを進めていいのかわからず、在籍のままとなっていることがあります。

●サービス業
イベント先などの売店には、期間中に学生を雇っていますが、次のシーズンには来ないことが多いです。 そのため、退職届を回収するまでは、在籍の状態となっています。

●飲食業
現場で退職届を出させる運用が徹底されていないため、放置された状態になっています。

●医療事務サービス
契約の際に、一定の就業期間がない場合は 「一般退職の扱いとする」規程にしています。それにより、退職届未回収の対策としています。

パートやアルバイトなど、退職届未回収の問題を抱えている企業は多いようです。
勤務期間が長く抜けてしまうことが常態化していて、退職届の未回収リスクも高いという場合は、就業規則の中で「一ヶ月勤務実績がなければ退職とみなす」とし、自動的に退職となるようにするなどのリスクヘッジが望ましいです。

Q-6 契約書の「次回、更新なし」はどのように記載する?

●サービス業
契約書は2種類あり、「次回更新なし」の契約とするか、個々に選別をしています。

●製造業
「次回更新なし」との具体的な記載はしていませんが、反対に「更新をしない場合」という記載をし、更新ができる条件、できない条件を明記しています。

●小売業
この制度を見据えて、2015年に、全パート従業員の契約書を 「更新なし」 に変更しました。 ただし、実際には更新させたい従業員もいるため、「場合によって継続することがある」 という記載を追加し ました。

●製造業
「契約更新なし」の記載は、モチベーション低下が懸念されるため、「契約更新あり」 として   更新の可否を1ヵ月前に伝えるようにしています。

●医療事務サービス業
弊社では、事業縮小や組織改編があったタイミングで、一年契約に変更しました。
特に、大きな問題にはなりませんでした。

契約書に「次回、更新なし」と記載する件については、相手に応じて契約書を分けたり、更新できる条件を記載するなど、各社とも従業員のモチベーションに配慮した方針にされていることがわかります。尚、各社の契約更改のタイミングについて、参考までにご紹介すると、「年度途中の入社の場合も、最初の契約は3/31までにして、次回の契約を4/1からに揃えている」「現状は、契約日はバラバラのため、年中、契約更改している状態」「誕生日で契約更改」など、各社様々でした。特に、誕生日で契約更改をしている企業の中には、高齢者が多く、年齢に応じて保険の切り替え手続きも発生しています。そこで、あえて誕生日で契約更改とし、業務負荷の分散を図っているというケースもありました。

第3回は「実際に雇止めはおこなうか?」「無期転換後の定年制度」「更新期待権をどう薄めるか?」について各社の見解・意見をご紹介します。

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「ディスカッションレポート・有期雇用契約における無期転換制度 人事担当者が感じる9つの疑問」

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