【ナレッジセンター】
人事給与パッケージのシステム選定 前編~評価基準に“顧客満足度”はありますか?~

2015年10月23日

人事給与パッケージは他のERPパッケージと比べて、現場である人事部門主体となって選定するケースが多く見られます。しかしながら、人事部門が“IT投資対効果”の観点でシステム選定をするのは難しく、高額な投資をしたにも関わらず、満足のいかない導入効果に終わるケースが結果的に少なくありません。ここでは、人事部門でも正しくパッケージ選定をするためのポイントをご紹介します。



パッケージ選定の一般的な評価基準と注意点

 一般的に業務パッケージを選定する際に、押さえておかなければならないポイントは以下の通りです。

 1.業務の適合性
 2.他製品との連携性
 3.導入サポート、保守サポートのサービスレベル
 4.企業活動のおける投資対効果(経済性/有効性/効率性)
 5.パッケージベンダーの姿勢
 6.導入実績



1.業務の適合性と2.他製品との連携性

 主に現場部門の現状業務と新しいシステムを比較して、業務が問題なく行えるか、現状の非効率な業務が改善されるかなどの、いわゆるFit&Gap分析を行います。現状業務をフローで洗い出し、業務要件を機能要件に置き換えて、RFPにまとめます。気を付けなければならないのは、業務への適合性と網羅性を取り違えずに正しく各要件に対して、優先度をつけることです。

 最近の業務パッケージは各社とも機能が充実しており、提案を受けている段階では各パッケージの違いを見極めることは容易ではありません。プレゼンテーションの上手さや目新しい機能に、判断が影響されることもあります。

 例えば、具体的でない“将来やりたいこと”を優先してしまうと、詳細に確認していない機能を選んでしまう可能性があります。一見、網羅的ではあるが、いざ新しいことをやろうとした時に、その機能が自社の要求に十分に適合しないため、サブシステムを後から追加購入するということもあります。特に人事給与の分野であれば、分析ツールのアウトプットやモバイル対応といったタレントマネジメント系の機能でよくある失敗です。業務フローや機能要件の具体性、新しい機能が本当に必要か、他部門や経営者とのすり合わせが十分に行われていない場合は、注意が必要です。

3.導入サポート、保守サポートのサービスレベル

 導入時の手厚さや稼働後のフォローアップといった、サポートのサービスレベルを見極めることも重要です。しかしながら、サービスメニューとコストの情報だけでは、各ベンダーともサービスレベルに差がほとんどありませんので、提案時に見極めを行うのはパッケージ機能を評価するのと同様に非常に困難と思われます。

 例えば、提案段階では“導入サポートの手厚さ”をアピールしていたのに、い ざ導入を始めてみると、提案を受けている段階では知らされていない前提条件があったために、実際には対応が遅く不満を感じるというケースはよくあります。ただし、ベンダー側も意図的に顧客をだまそうとしているわけでなく、同じ業種の導入経験が浅くノウハウや教育が不足していたり、ベンダー側の社内関係者間の情報共有がうまくいっていないときに対応が遅くなったりします。

 そのため、的確な運用回避策の提案ができず、不用意なカスタマイズが発生することもあります。こういったケースでは、全般的にレスポンスの遅さがありますので、提案段階から担当営業、担当SEの情報連携が十分に行われているか、レスポンスのスピードもチェックしておく必要があります。また、現行パッケージを選定した時の失敗点を整理しておき、評価基準に盛り込んでおくのも良いでしょう。

 稼働後の保守サポートの評価ポイントとして、ユーザーにとって一番気になるのは、サポートセンターへの電話の繋がりやすさや担当SEの訪問頻度です。このようなアフターフォローのサービスレベルは保守費用と比例しますので、維持コストをどれだけかけられるのかといった自社の条件と照らして判断をする必要があります。ただし、一般的に維持コストを圧縮していく傾向にありますので、標準サポートの範囲内に、ベンダーとコンタクトが取れる機会やユーザー同士で相談しあえるコミュニティの有無をチェックポイントとするのも有効です。


コラム一覧に戻る

過去の社労士コラム一覧に戻る