新型コロナウイルス感染症と労災補償

2020年5月27日

新型コロナウイルス感染症にり患した場合の労災補償の取扱いについては、通達(基補発0428第1号 令和2年4月28日)により次の考え方が示されています。

新型コロナウイルス感染症と労災補償

【国内の場合】

  1. 医療従事者等
    患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。
  2. 医療従事者等以外

    〇感染経路が特定されたもの
    感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

    〇感染経路が特定されていないもの
    調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
    この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
    (ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
    (イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

【国外の場合】

  1. 海外出張労働者
    海外出張労働者については、出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断すること。
  2. 海外派遣特別加入者
    海外派遣特別加入者については、国内労働者に準じて判断すること。

また、Q&Aで下記の考え方が補足されています。

複数の感染者が確認された労働環境下」とは?

→請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。
なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられます。

顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」とは?

→小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。

上記(ア)(イ)以外の他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断します。

上記を踏まえて、業務上の事由により新型コロナウイルス感染症にり患したと判断された場合は、他の疾病と同様に労災補償の対象となり、休業補償給付等の給付を受けることができます。
なお、当該感染症へのり患が業務上ではなく業務外の事由だと判断された場合は、健康保険の対象となり、傷病手当金等の給付を受けることができます。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「最新整理 働き方改革関連法と省令・ガイドラインの解説」(共著/日本加除出版株式会社)、「アルバイト・パートのトラブル相談Q&A」(共著/民事法研究会)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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