労働法のあれこれ

2018年7月11日

「労働法」という言葉をよく耳にしますが、「労働法」という単独の法律はなく、労働に関連した各法律の総称として使われています。
使用者(会社側)、労働者(従業員側)の関係維持にとても重要な役割を果たす「労働法」について主だった法律をご紹介します。

労働三法

いわゆる労働三法とは、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の3つの法律を指します。

労働基準法(労基法)

最も耳にする労働法かと思いますが、労基法では使用者のもとで労働者が働くうえでの労働条件に関する最低基準を定めています。
労働契約、賃金、労働時間、休息、休日及び年次有給休暇、就業規則等、労働者に密接した項目を規定しており、違反した使用者に対しては刑法の側面を持つ罰則が定められています。
労働基準法>労働協約>就業規則>個別労働契約
この通り、労使が合意した労働契約でも、労基法を下回る内容の部分は強制的に労基法の最低基準に置き換えられることになります。

労働組合法(労組法)

労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させ、労働条件についての交渉、労働組合の組織、団結を擁護し、労働協約締結のための団体交渉を助成すること等を目的としています。
労働組合には、企業の従業員で組織される「企業別組合」、企業の枠を超え職種や産業ごとに組織される「横断組合」、個人で加入する「合同組合」等があります。
使用者は労働組合からの団体交渉を拒否した場合「不当労働行為」となりますので誠実な対応が必要です。

労働関係調整法(労調法)

労働組合、労働者が使用者と労働争議による紛争に発展した場合において、労働委員会への届出により、労働委員会は紛争解決に向けてのあっせん、調停、仲裁を行います。

その他の法律

労働契約法

平成20 年に制定された比較的新しい法律です。
就業形態が多様化し、昨今個別労働関係紛争が増加していますが、これを解決するルールは個別の法律に断片的に規定されているのみでした。
各紛争事案の判例の蓄積をもとに労働契約の内容の決定及び変更に関する民事的なルール等を一つの体系としてまとめ、この法律が制定されました。
これにより労働契約における権利義務関係を確定させる法的根拠が示され、個別労働関係紛争の防止に繋がりました。

最低賃金法(最賃法)

地域ごと、一部産業ごとの賃金の最低額を保障することにより、労働条件を改善し、労働者の生活の安定、労働力の質的向上をはかることにより、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています。

労働安全衛生法(安衛法)

労働者の安全と衛生についての基準を定め、労働災害防止を推進することにより、職場における労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成と促進を行うことを目的としています。
労働基準監督署では一定規模以上の事業所に対し積極的な臨検を行い、(安全)衛生委員会の設置、(安全)衛生管理者、産業医の配置を求め、安衛法の遵守を促しています。

労働者災害補償保険法(労災法)

業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対しての保険給付と、社会復帰の促進等を目的としています。

・業務災害と通勤災害

業務災害による給付は「補償給付」であるのに対し、通勤災害では「給付」となっています。
労働基準法は業務災害に関して、事業主に罹災した労働者に対して補償義務を課しており、労災保険はこの補償義務を補填するものという位置付けになります。
これに対して通勤災害は事業主に労働基準法上の補償義務は課しておりません。しかし、通勤は業務に付随した行為であるため、労働基準法ではなく労災法の範囲内で定めております。
従いまして、業務災害には解雇制限が適用されるが、通勤災害には解雇制限が適用されない等の若干の相違があります。

このほかにも(いずれも略称)

  • 男女雇用機会均等法
  • パートタイム労働法
  • 育児介護休業法

等々、労働者、使用者が関わる法律はたくさんあります。
ワークライフバランスが推進されている今こそ、「労働法」をよく理解して、労使双方が幸せになる社会を実現しましょう。

執筆陣紹介

SATO社会保険労務士法人

SATO社会保険労務士法人は、企業に働く従業員の社会生活上欠かす事のできない社会・労働保険の業務を、高レベル・平準化されたサービスとして提供する業界のパイオニア。組織の強化を図り、「大規模事業場向け」「大量処理」を実現し、東京・札幌・大阪・名古屋・福岡を拠点に、高品質なサービスを全国に提供しています。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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