65歳超雇用推進助成金とは?/65歳以上雇用保険適用拡大/年金受給資格期間が”10年”に!

2017年1月11日
65歳超雇用推進助成金とは?

高齢者の雇用促進、就業機会の確保・拡充を目的とした、平成28 年10 月19 日に新たに創設された助成金です。創設日以降に、

①65 歳への定年引上げ
②66 歳以上への定年引上げまたは定年の撤廃
③66 歳~69 歳の希望者全員の継続雇用
④70 歳以上の希望者全員の継続雇用

のいずれかの制度を導入すれば、措置の内容に応じた額が1 事業主あたり1 回に限り助成されます。

申請のための要件

●上記①~④のいずれかを規定する際、経費を要すること
→就業規則の変更等の対応が必要となりますが、必ず外部(社労士等の専門家)へ委託しなければなりません。

●上記①~④のいずれかの制度を規定した労働協約または就業規則を整備していること
→当助成金を申請するには、本来就業規則の届出義務のない常時10 人未満の事業所でも制度を謳った就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。

●制度の実施日より1 年前~支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8 条・第9 条1項に違反していないこと
→8 条は「定年は60 歳未満に定めてはならない」という内容で、9 条1 項は「定年制度の撤廃・65歳以上の定年または継続雇用」をいいます。

●支給申請日の前日において、1 年以上雇用保険に加入して継続雇用されている60 歳以上の労働者が1 人以上いること

助成額については以下の通りです。
・65 歳への定年引上げ → 100 万円
・66 歳以上への定年引上げまたは定年の撤廃 → 120 万円
・66 歳~69 歳の希望者全員の継続雇用 → 60 万円
・70 歳以上の希望者全員の継続雇用 → 80 万円

当助成金は、充てられている予算に限りがあり要件も比較的ハードルが低いものとなっており、多くの事業主の方が申請されることが見込まれるので、お早めの検討をお勧めします。

65歳以上雇用保険適用拡大

平成29 年1 月1 日から、加入要件を満たしている65歳以上の労働者は雇用保険の加入対象になります。
運用開始となりましたこの適用拡大に必要な手続をQ&A方式でご紹介します。

Q1:加入要件(※)は満たしていたが65 歳以上で入社し、雇用保険非加入となっている労働者は、いつまでに手続きすればいいのですか?
A1:平成28 年12 月31 日時点で被保険者となっていない65 歳以上の方は「高年齢被保険者」となり、雇用保険の取得手続きを平成29 年3 月31 日までに行う必要があります。
(※)週の労働時間が20 時間以上で、31 日以上の雇用見込があることが雇用保険の加入要件です。

Q2:雇用保険料はどのようになるのでしょうか?
A2:保険料については、4 月1 日時点で満64 歳以上の方は本人・事業主負担ともに免除とされていますが、平成32 年度から雇用保険料の徴収対象となります。
(=平成31 年度末までは雇用保険料徴収は必要ありません。)

Q3:新たに被保険者となった65 歳以上の労働者が対象となる給付金はありますか?
A3:今回の適用拡大により加入した方は、高年齢被保険者となるため、離職後は受給要件を満たしていれば、高年齢求職者給付金(※)を受給できます。(年金と併給可)
(※)離職前1 年間に雇用保険に加入していた期間が通算して6 ヶ月以上必要です。
また、平成29 年1月1日以降は、高年齢被保険者の方も育児休業給付金や介護休業給付金の支給対象にもなります。

年金受給資格期間が”10年”に!

これまで65 歳から老齢基礎年金を受給するには、「受給資格期間」と呼ばれる原則25 年以上(300ヶ月以上)の納付期間が必要でしたが、改正年金強化法が可決・成立され、平成29 年8 月施行・同年10 月より「10 年に短縮」されることになりました。

そもそも必要な期間とは…3つの対象期間
・厚生年金や国民年金の保険料を納付した期間
・国民年金の保険料納付を免除された期間
・合算対象期間(カラ期間)
例えば、第3 号被保険者期間や納付猶予期間、学生納付特例期間、海外に居住していた期間など、これらは、すべて対象期間になります。

25年から10年に変わることによって…?!
今回の改正により、この3 つの期間を併せて10年以上25 年未満の受給資格期間の人も、老齢基礎年金を受給できるようになり、また1 か月でも厚生年金に加入していた場合には、老齢厚生年金も受給できます。

短縮によって対象者は増えますが…?!
例えば20 歳からの40 年間、欠かさずに国民年金保険料を納付し、満額の老齢基礎年金を受給しても、その額は平成28 年度の計算で約78 万円。
もし10 年しか保険料を納付しなかった場合には約19 万円程度となり、生活費用としては非常に少ない額となります。
受給資格期間の要件が25 年から10 年に短縮されても、保険料の納付、または免除申請手続きをした上で、支払いができる時に保険料の追納制度を利用する等、工夫が必要かもしれません。

ちなみに…国民年金保険料の後納制度とは?
後納制度とは、時効で納めることができなかった国民年金保険料について、平成27 年10 月から平成30 年9 月までの3 年間に限り、過去5 年分まで納めることができる制度です。
思い当たる方はぜひ最寄りの年金事務所などにお問い合わせください。





執筆陣紹介

SATO社会保険労務士法人
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