労働時間を把握するときの単位は?

2015年9月24日

 最初に質問ですが、労働時間は何分単位で管理することが正しいのでしょうか?

 答えは「1分単位」です。これは法律に明示されているものではなく、下記通達からそのように解釈されています。

【S63.3.14基発150号】
「月の時間外総数に1時間未満の端数がある場合、30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げることは差し支えない」


 上記通達は例外的取扱いについての記載であるため、反対解釈として、厳密には「労働時間である以上、1分単位で支給しなければならない」ということになります。  したがって、労働基準監督署の監督官による臨検でも、労働時間管理を15分や30分単位で端数を切り捨てる措置をしている場合、改善指導を受けることになります。

 では、企業としてどのような対策が必要なのでしょうか?
 従来は、残業を事前申請制とし、申請のないものは残業時間として扱わないという方法が主流でした。この方法も運用次第では認められるものではありますが、ほとんどの従業員が申請せずに所定の勤務時間と大きく乖離(かいり)した勤務実態がある場合など、制度自体が“形骸化”しているものと判断され、タイムカード等の勤務実態が真の労働時間と取り扱われることになる可能性が高くなります。  最近では、就業規則上の“始業・終業時刻”と実際の“出社・退社時刻”との乖離時間について、自己申告により乖離事由の記録を残すという対応が求められてきています。残業時間を申請するのはもちろんのこと、残業時間ではない時間についても積極的に「残業時間ではない」という申告を従業員自らに行ってもらうというものです。

 例えば、朝の通勤ラッシュを避けるために始業時刻の1時間も前に出社する従業員がいたとします。会社は残業(早出)の指示を出しているわけではない場合、その1時間を労働時間とは認めないでしょう。このような場合には、本人が日々始業前に出社する理由を確認した上で、「始業前の1時間は残業(早出)ではありません」という申告をしてもらい、記録に残すことが必要となります。

 実際には、「1=ゆとり出勤」などを定め、番号で申告してもらうなどの措置を取る方法が導入しやすいでしょう。タイムカードや勤怠管理簿に手書きで自己申告する方法もありますが、あらかじめシステムで始業・終業時刻との乖離が発生した場合にエラーメッセージを表示させ、乖離の理由を本人が入力をしないとメッセージが消えないなどの運用とすることも考えられます。

 終業時刻と退社時刻の乖離についても同様の考え方で、自社に合った乖離理由を定め、自己申告してもらうことになります。

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