人事評価制度は精緻に作り込むべきか?(人事評価制度改定のポイント)

2015年8月26日

昨今では多くの企業で人事評価制度に関する強い問題意識を持ち、それらへの対処として制度を精緻化するケースが多く見受けられます。しかし、制度の形骸化を招きかねない精緻化ではなく、むしろ制度のシンプル化による会社メッセージの明確化や、運用面での的確な対応こそが、人事制度の信頼性向上につながる着実な打ち手であるといえます。

昨今、経営者の方々と人事領域に関するお話をする中で、自社の人事評価制度に対する問題意識の高まりを実感することが増えています。「数年前に導入した人事評価制度が現状に合っていない」、「評価基準が曖昧で、評価者により甘辛のバラつきが出る」等が典型的なケースです。今回は、こうした問題意識に対し「人事評価制度を精緻に作り込むべきか」という側面から、制度改定のポイントについて考察します。

1.人事評価制度は精緻に作り込むべきか?

冒頭の典型的な問題意識に対して、評価項目数の大幅な追加や、評価基準の詳細化(期待する日常業務行動を数多く列挙する等)により対応するケースが多く見受けられます。しかし、こうした精緻な制度設計を行ったにも関わらず、以下の各点で機能しないものとなり、制度形骸化に拍車をかけてしまうことが多いのが実情です。

  • ①ボリュームが膨大になり、上司・部下の双方にとって評価実務が煩雑になる
  • ②評価項目数が多過ぎ、会社として社員に期待するメッセージが伝わりにくくなる
  • ③事業や組織の改編の都度、評価項目・基準を頻繁に修正する手間がかかる
2.人事評価制度改定のポイント

それでは、問題意識への打ち手として、どのようなポイントを意識すべきでしょうか。一般的な評価要素である成果評価(業績数値等)、プロセス評価(成果に結び付く行動等)のいずれに対しても、以下3点の着実な実践が効果的です。

  • ①「会社として現在、社員に意識付けたいメッセージ」の観点から、評価項目・基準をシンプルに絞り込む
  • ②評価者研修やフィードバック面談の実施等、運用面を通じて社員間での評価内容擦り合わせを図る
  • ③人事部門による現場への助言や情報提供等のフォローを丁寧に行う

各社の実情に応じて上記のポイントを重層的に組み合わせ、地道な取り組みを繰り返すことこそが、人事評価制度の信頼性向上につながるものと確信します。

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