通勤手当の非課税限度額の引上げ
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【5分で納得コラム】 今回のテーマは「通勤手当の非課税限度額の引上げ」です。
通勤手当の非課税限度額の引上げ
1. 令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当が対象
令和7年11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、通勤のため自動車などの交通用具を使用している給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。
具体的には、以下の赤枠の部分が変更になります。
※「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(国税庁)より抜粋(赤枠は加筆)
2. 年末調整に影響あり
今回の改正は、令和7年4月以降の通勤手当について遡って適用されることになりますが、過去の各月の給与を再計算して修正する必要があるのでしょうか。
国税庁のQ&Aでは、「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当で、令和7年11月19日までに支払われたものについては、遡って税額の再計算を行う必要はなく、本年の年末調整の際に、改正後の非課税限度額を適用した場合に過納付となる税額を精算することになります。」としています。
つまり、過去の各月の給与を再計算する必要はないものの、年末調整で過去の分の精算をしなければならないということになります。なお、年末調整における具体的な手続きについては、以下のとおり示されています。
イ 既に改正前の非課税限度額を適用したところで所得税及び復興特別所得税の源泉徴収をした(課税された)通勤手当のうち、改正後の非課税限度額によって新たに非課税となった部分の金額を計算します。
ロ 「令和7年分給与所得に対する源泉徴収簿」(以下「源泉徴収簿」といいます。)の余白に「非課税となる通勤手当」と表示して、イの計算根拠及び今回の改正により新たに非課税となった部分の金額を記入します。
ハ また、源泉徴収簿の「年末調整」欄の「給料・手当等①」欄には、「給料・手当等」欄の「総支給金額」の「計①」欄の金額からロの新たに非課税となった部分の金額を差し引いた後の金額を記入します。
ニ 以上により、改正後の非課税限度額によって新たに非課税となった部分の金額が、本年の給与総額から一括して差し引かれることになるため、その差引後の給与の総額を基にして年末調整を行います。
3. 退職者への対応
すでに退職した者へも対応が必要なのでしょうか。
国税庁のQ&Aでは、「年の中途に退職した人などに対し支払っていた通勤手当が、改正前の非課税限度額以下である場合には、特段の対応は不要ですが、改正前の非課税限度額を超えた通勤手当を支払っていた場合で、改正後の非課税限度額を適用することで新たに非課税となった部分の金額があるときは、「支払金額」欄を訂正するとともに、「摘要」欄に「再交付」と表示した給与所得の源泉徴収票を作成し、再度交付してください。」とあります。よって、退職者にも対応が必要ということになります。
通常の年末調整で繁忙期を迎えている中で、令和7年4月以降の通勤手当について確認し、年末調整に反映させるとともに、退職者にも源泉徴収票を再交付しなければならず、給与計算に関わる人の令和7年の師走はいつも以上に忙しくなりそうです。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所)、「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会)、「労災の法律相談〔改訂版〕」(共著/青林書院)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社)、「労務トラブルから会社を守れ!労務専門弁護士軍団が指南!実例に学ぶ雇用リスク対策18」(共著/白秋社)など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

