第23回 管理連結の導入目的の整理

2025年11月27日
第23回 管理連結の導入目的の整理

【5分で納得コラム】 今回のテーマは、FP&Aの役割における「管理連結の導入目的の整理」についてです。

企業グループにおいて経営判断の質とスピードを高めるうえで、FP&Aは中心的な役割を担っています。しかし、制度連結のタイミングだけでは、グループ全体の実態を十分に把握できず、予算実績管理や差異分析、フォーキャスト修正といったFP&Aのコア業務が後手に回りがちです。こうした状況を打開するため、多くの企業が月次で連結ベースの業績を捉える管理連結の整備を進めています。管理連結は、単なる決算早期化ではなく、FP&Aが迅速かつ実態に即した分析を行うためのデータ基盤であり、事業構造の変動把握やKPIとの統合分析を可能にする重要な仕組みです。

一方で、導入目的が曖昧なまま進めてしまうと、現場負担のみが増え、FP&Aの意思決定支援に活かされない形式的な数字の集計に陥るリスクもあります。そのため、管理連結で何を実現し、どの精度のデータを活用するのかを明確化し、FP&A・経営層・経理部門が共通の目的意識を持つことが不可欠です。本稿では、管理連結導入目的の整理について解説します。

第23回 管理連結の導入目的の整理

1. 管理連結導入の意義と目的整理の重要性

企業グループにおいて、経営判断のスピードと精度を高めることは競争力の源泉であり、持続的な成長を実現するために欠かせない取り組みです。近年、事業環境の不確実性が増す中で、グループ全体の損益や財務状況を四半期・年次といった制度的なタイミングで把握するだけでは、経営判断が後手に回ってしまうリスクが高まっています。そのため、多くの企業が連結グループでの経営管理を高度化する手段として管理連結、すなわち月次連結会計の導入に踏み出しています。

管理連結は、法定決算を目的とした年次・四半期連結とは異なり、経営管理やFP&A機能と密接に連携し、グループ全体の業績を月次で迅速かつ的確に把握するための仕組みです。単に連結作業を早めるだけではなく、経営会議や意思決定プロセスと連動した経営インフラとして位置付けることが重要となります。

しかし、導入目的が曖昧なままシステム導入やルール整備のみを進めてしまうと、多大な労力を費やしたにもかかわらず、経営判断に活用されない数字が積み上がるだけの形骸化した仕組みになりかねません。最悪の場合、グループ各社に過度なデータ提出負担を強いるだけの制度となり、現場の反発や運用崩壊を招く可能性もあります。

そのため、導入に着手する以前に、まず、管理連結によってどのような経営課題を解決するのかという目的と、どのレベルの粒度や精度を求めるかという基本方針を明確化する必要があります。このプロセスには、経営層、FP&A、経理部門が深く関与し、導入後のあるべき姿について共通の理解を確立しておくことが重要です。

2. 管理連結導入の目的整理

管理連結導入の目的整理を行う上でまず重要なのは、何のために管理連結を導入するのかを明確にすることです。制度連結と異なり、管理連結は法律で義務付けられているものではなく、あくまで企業が自主的に構築・導入する仕組みです。そのため、導入目的を明確にしない場合、制度設計や業務設計が場当たり的になり、結果として本来期待される経営管理への貢献が十分に発揮されなくなってしまいます。管理連結の導入目的は以下のように整理できます。

(1)グループ業績の迅速な把握

多角化した企業グループでは、全社の単一PLだけでは事業構造を正しく理解できません。事業セグメント・地域別・製品別・顧客別など、多様な管理軸での業績を把握する必要があります。

管理連結を活用することで、各セグメントの月次業績が一目でわかるようになり、次のようなメリットが生まれます。

  • ① 不採算事業の早期発見及び改善策の立案・撤退判断の迅速化
  • ② 成長事業に資源を積極投入する意思決定の早期化
  • ③ 利益貢献度の高い事業・低い事業の定量的な把握による経営資源の最適配分の実現
  • ④ 事業責任者への説明責任の明確化によるPDCAの活性化

例えば、ある事業が通期では黒字に見えても、月次で詳細に見ると、ある製品ラインは継続的に赤字であったり、一部地域で慢性的に粗利率が低下しているなどの問題が早期に明らかになります。こうした月次連結とセグメント管理を組み合わせることで、経営層が根拠ある意思決定を行うことができます。

(2)経営判断に役立つ分析可能なデータの提供

予算実績管理は企業における経営管理の中核となる仕組みであり、計画値と実績値の乖離を特定し、その原因を分析したうえで改善策の立案につなげるための重要なプロセスです。しかし、個社単位での実績データのみでは、グループ全体としての全体最適を判断することは困難です。事業間のシナジーや相殺関係、内部取引の影響などを踏まえた連結ベースの実態を把握することはできません。

管理連結を導入し、連結レベルで予算と実績を比較できる仕組みを整えることで、経営判断に有用な分析可能なデータを提供することが可能になります。具体的には、次のような効果が期待されます。

  • ① 個社では把握困難な連結PLの構造的変動の可視化
    (例:子会社間取引価格の影響、内部利益の発生、セグメント構成比の変化など)
  • ② グループ全体における販売動向やコスト構造の変化の早期検知
  • ③ 固定費・共通費の配賦を踏まえた真の業績の把握
  • ④ 経営層向け報告資料の実態に合った形への改善

FP&Aにとって、月次の連結ベースのデータは、差異分析・トレンド分析・フォーキャスト修正の基盤となるため、その有無が業務品質に大きな影響を与えます。

(3)経営サイクルと連動した判断プロセスの構築

重要な経営会議や事業の進捗を確認するレビュー会議など、会社の意思決定サイクルに間に合うタイミングで最新のデータを提供します。これにより、経営層が判断を下すタイミングと、その根拠となる数字が確定するタイミングのズレを解消します。

これらを実現するためには、制度連結より早く、しかも制度連結と同等の正確さを求めるといった、現場に過度な負担をかける進め方は避けるべきです。重要なのは、経営層・FP&A・経理部門が緊密に連携し、管理連結の目的に応じた合理的な「集計基準」「情報の粒度」「報告スケジュール」を設計することです。こうした合意形成を経ることで、実務上無理のない運用と経営に真に資する仕組みとの両立が可能になります。

(4)非財務KPIとの連動

現代の経営は、財務データだけでは限界があり、稼働率、販売数量、サブスク解約率、人員数など、さまざまな非財務KPIとの連動が求められています。

管理連結を整備することで、財務データと非財務データの統合が可能になり、KPI経営が飛躍的に進化します。

具体的には、以下のような高度な管理が実現します。

  • ① 売上・粗利と非財務KPI(契約数・稼働率・利用率など)の因果関係の分析
  • ② 財務データとKPIを組み合わせた経営ダッシュボードの構築
  • ③ 事業モデルごとの成長ドライバーの可視化
  • ④ 形式的な財務報告から、行動につながる分析への転換

例えば、SaaS企業の場合、財務データ(売上・ARPU)と非財務データ(チャーン率・LTV・獲得件数)を結びつけることで、経営の意思決定が格段に高度化します。また製造業では、設備稼働率や歩留率と財務結果を紐付けることで、生産性向上の施策がより精密に検証可能になります。

表 管理連結の目的

イメージ

管理連結は、こうしたKPI と財務の統合分析の基盤となり、データドリブン経営を可能にする重要なステップです。

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仰星コンサルティング株式会社

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