在職老齢年金の「支給停止調整額」2025年度は51万円
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【5分で納得コラム】
今回のテーマは「在職老齢年金の支給停止調整額」についてです。在職老齢年金の「支給停止調整額」2025年度は51万円
1. 在職老齢年金の仕組み
少子高齢化が進行し、現役世代の負担が重くなる中で、一定の報酬を受けている年金受給権者については年金制度を支える側にまわってもらうという考え方のもと、老齢厚生年金には「在職老齢年金」という仕組みがあります。
これは、厚生年金保険の適用事業所に使用され、被保険者資格を取得している年金受給権者の報酬(賃金)が一定額以上の場合に、老齢厚生年金の一部又は全部の支給を停止する仕組みです。
なお、厚生労働省の資料によれば、2022年度末において、在職老齢年金の仕組みにより老齢厚生年金の支給停止対象になっている割合は、65歳以上の在職している年金受給権者では16%とのことです。2. 支給停止額の計算方法
支給停止額の計算方法は、2022年3月以前は65歳未満と65歳以上でその方法が異なり複雑でしたが、2022年4月以降は統一され、基本月額(=老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額(=当該月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額を12で割った額)の「合計額」(A)と「支給停止調整額」に応じた以下の計算方法になっています。
A = 基本月額 + 総報酬月額相当額
◇ A ≦ 支給停止調整額 のとき
支給停止額=0 ※年金額の全額が支給されます。
◇ A > 支給停止調整額 のとき
支給停止額(月額)=( A − 支給停止調整額 )÷23. 2025年度の「支給停止調整額」は51万円
在職老齢年金における「支給停止調整額」は名目賃金の変動に応じて改定されますが、2025年度は「51万円」(2024年度は50万円)になっています。
なお、日本年金機構のWEBサイトに在職老齢年金の具体的な事例が掲載されていますので、参考にされてください。■Aさんの場合:給与24万円(月額)、賞与42万円(年間)、老齢厚生年金10万円(月額)、老齢基礎年金6万円(月額)
Aさんの場合、給与と老齢厚生年金の合計が1月あたり37.5万円で、支給停止調整額の51万円以下であるため、年金を全額受給できます。
※在職老齢年金の計算の対象となる給与には、1月あたりの賞与額(1年間の賞与を12で割った金額)を含みます。また、税金等を控除する前の額で計算されます。
■Bさんの場合:給与38万円(月額)、賞与144万円(年間)、老齢厚生年金14万円(月額)、老齢基礎年金6万円(月額)
Bさんの場合、給与と老齢厚生年金の合計が1月あたり64万円で、支給停止調整額の51万円を13万円超えています。
そのため、支給される老齢厚生年金から13万円の2分の1の額である6.5万円が支給停止されます。
※在職老齢年金の計算の対象となる給与には、1月あたりの賞与額(1年間の賞与を12で割った金額)を含みます。また、税金等を控除する前の額で計算されます。※「年金Q&A(老齢厚生年金全般)」(日本年金機構)より
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。