2025年4月から新設された育児時短就業給付金
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「2025年4月から新設された育児時短就業給付金」です。
2025年4月から新設された育児時短就業給付金
1. 子の年齢等に応じた4つの給付金
雇用保険においては、子の年齢や養育の状況に応じて4つの給付金が用意されています。具体的には、「出生時育児休業給付金」、「育児休業給付金」、「出生後休業支援給付金」及び「育児時短就業給付金」です。
4つの給付金を支給対象となる年齢に応じて示すと、以下になります。※「育児休業等給付の概要」(厚生労働省WEBサイト)より
2. 育児時短就業給付金
育児時短就業給付金は、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に2025年4月1日から新設された給付金で、2歳に満たない子を養育するために時短勤務をした者が一定の要件を満たすときに給付を受けることができます。
なお、育児時短就業給付金の受給資格等は以下のとおりです。受給資格 次の①及び②をいずれも満たす者
①2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する雇用保険の被保険者(一般被保険者又は高年齢被保険者)であること
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について育児時短就業を開始したこと、又は、育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること各月の支給要件 次の①から④をいずれも満たす月
①初日から末日まで続けて雇用保険の被保険者である月
②1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
③初日から末日まで続けて育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
④高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月支給対象期間 原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月まで
ただし、以下の①から④の日の属する月まで
①育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日
②産前産後休業、育児休業又は介護休業を開始した日の前日
③育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために育児時短就業を開始した日の前月末日
④子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日支給額 原則として育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額
ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整される支給対象外 次の①~③の場合は、給付金は支給されない
①支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の100%以上の場合
②支給対象月に支払われた賃金額が、支給限度額※以上の場合
③支給額が、最低限度額※以下の場合※支給限度額、最低限度額は毎年8月に改定。2025年7月31日までは支給限度額は459,000円、最低限度額は2,259円
3. Q&Aも要確認
厚生労働省のWEBサイトにおいて「Q&A~育児休業等給付~」が公開されていますので、育児時短勤務の対象者が生じる場合に備えて事前に確認しておきましょう。
なお、一部抜粋したものは以下のとおりです。Q43 シフト制で働いている場合は、どのようなときに育児時短就業となりますか。
労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態(いわゆるシフト制)で就業する場合は、育児時短就業開始日前後の実際の労働時間に基づいて1週間当たりの平均労働時間を算定し短縮が確認できるときは、育児時短就業と取り扱います。
Q47 育児時短就業給付金の支給額は、どのように計算されるのですか。
育児時短就業給付金の支給額は、支給対象月に支払われた賃金額と育児時短就業開始時賃金月額(※1)を比較し、次の1~3のとおり計算します。
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1. 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合
育児時短就業給付金の支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 10% -
2. 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合
育児時短就業給付金の支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 調整後の支給率(※2) -
3. 支給対象月に支払われた賃金額と、1または2による支給額の合計額が支給限度額(※3)を超える場合
育児時短就業給付金の支給額 = 支給限度額 - 支給対象月に支払われた賃金額
※1 育児時短就業開始時賃金月額は、原則として、育児時短就業開始前6か月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除きます。)を180で除した額に30を乗じた額です。ただし、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始した場合は、当該育児休業給付に係る休業開始時賃金日額に30を乗じた額です。
※2 支給対象月に支払われた賃金額と支給額の合計が、育児時短就業開始時賃金月額を超えないよう支給率を調整します。実際の支給率及び早見表は、以下のとおりです。
※3 支給対象月に支払われた賃金額が、一定額以上の場合は、給付金が支給されなくなることがあり、このときの基準額を支給限度額といいます。支給限度額は毎年8月1日に改定されます。
Q48 育児時短就業給付金の支給額は、1か月でどの程度なのか、例示の金額でもいいので教えてください。
育児時短就業開始時賃金月額が300,000円である場合の支給額の例です。
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(1)支給対象月に支払われた賃金額が200,000円の場合
支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%(270,000円)以下のため、支給額は、200,000円 × 10% = 20,000円です。 -
(2)支給対象月に支払われた賃金額が280,000円の場合
支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%(270,000円)超のため、この場合の支給率は6.43%となり、支給額は、200,000円 × 6.43% = 18,004円です。
Q51 育児時短就業給付金の支給申請は、被保険者が行うのでしょうか。
育児時短就業給付金の申請手続は、原則として、事業主を経由して行う必要があります。
ただし、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続を行うことも可能です。 -
1. 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。