【ナレッジセンター】
会計システムの見分け方(後編)

2016年4月12日

20160412-02 「どれも機能が横並びで、どこに声をかけたらよいかわからない」
会計システムの選定担当者からよく聞く話です。前編ではシステムレンジ別の製品特性についてご紹介しました。後編では「ERPと業務単体システム」「導入時・稼働後のサポートレベル」「リリースサイクル」「クラウドとオンプレミス」の視点による製品特性の違いをご紹介します。



5.ERPと業務単体システムの視点で見ても、会計システムの製品特性の違いは明確です。
ERPは統合型と分割型に大きく分かれますので、それぞれの分類における会計システムの特性を抑えておきましょう。

分類 それぞれの分類における会計システムの特徴
統合型ERP 販売・経費・人事・給与・会計など、全体統制を目的として構築されたシステム。全体最適化を最優先に考える場合は統合型が適当です。

<リスク>
マスタ設定などには制限がありますので、現場の業務を意識したシステム構築という点では自由度が低くなります。

<会計システムの特性>
統合型ERPは、一般的に販売系の機能を中心に開発され、会計系の機能は必要最小限に抑えらています。そのため、会計機能の周辺にサブシステムを追加開発するなどのリスクがあります。

分割型ERP 同一基盤上で、販売・経費・人事・給与・会計システムを利用する構造になっています。統合型ERPに比べ、それぞれが独立したシステムになるため、各システムごとに機能網羅性を追求することはできます。

<リスク>
ベンダーによって、販売管理が得意、会計が得意といった、機能別の得手不得手の傾向があります。

<会計システムの特性>
それぞれのシステムが同一ブランドなど、親和性が高ければ、会計システムとの連携はスムーズですが、ブランドが異なる場合には、連携の制約が多くなり、各システム間の連携は効率化できない場合があります。

業務単体システム 販売・経費・人事・給与・会計システムは、それぞれ他社のシステムを利用します。各業務部門で最適なシステムを利用できますので、現場の利便性を確保することができます。

<リスク>
データ連携については、各システムごとの連携機能に依存します。

<会計システムの特性>
一般的に、会計システムが他のシステムからデータを受け取ることが多くなりますので、汎用性の仕訳連携機能やマスタ連携機能など、データ取込機能が充実している会計システムを利用する必要があります。



その他、一般的なシステムの比較ポイント別に整理すると以下のようになります。

比較ポイント 統合型ERP 分割型ERP 業務単体システム
コスト × 高額 標準的価格帯 標準的価格帯
会計業務 運用回避やシステム外での対応が必要な場合あり 専門性が高く充実 専門性が高く充実
データ連携 シームレス シームレス 連携機能の充実度に依存
拡張性 機能拡張の自由度、柔軟性欠ける場合あり 全体統制も検討する必要あり 単独で柔軟に機能拡張が可能
導入作業の
安定性
全体統制も検討しながら進める必要あり 全体統制も検討しながら進める必要あり 会計システム単独で推進可能
税制改正
アップデート
カスタマイズや適用時にシステム停止を伴う可能性がある 問題なくアップデートが可能である 問題なくアップデートが可能である
障害発生時 × 他部門を含め業務全体に影響 障害によるシステムダウンは限定される 障害によるシステムダウンは限定される



6.導入時・稼働後のサポートレベル

導入時の負担の大きさは、開発元が導入を行う場合と販売元が行う場合で変わります。 販売元が導入を行う場合は、問題発生時のレスポンスに注意が必要です。 同様に、稼働後のサポートレベルにおいても、サポート窓口を開発元が直接行う場合と、販売店が行う場合では、緊急時のレスポンスなどが懸念されます。



7.リリースサイクル

一般的に5年のサイクルで大掛かりなバージョンアップが発生します。OSやDBサーバーのバージョンアップに伴い、会計システムも新しいバージョンがリリースされますが、併せて、現行のバージョンの保守サポートが終了する場合があります。そのため、新しいバージョンにアップデートするには、初回導入時に近いコストと導入の手間が発生します。また新バージョンでは製品品質が安定していなかったり、操作感が大きく変わったりと、業務に支障をきたすリスクもあります。また、リリースサイクルが短いシステムの場合は、メーカーは複数の異なるバージョンの保守をおこなっていますので、サポート担当者の知識が分散し、サポート品質やレスポンスの低下を招く傾向があります。リリースサイクルを確認し、同一バージョンで機能強化を続けているシステムであれば、このようなリスクは少ないシステムと言えます。

特徴 傾向
リリースサイクルが短い <メリット>
常に最新の環境と新しい機能を利用できる

<デメリット>
保守サポート切れが発生する
SEのスキル低下
リリースの度に不具合の影響を受ける可能性がある
機能継承されない場合、運用の見直しをする必要がある
操作感の変更により、操作研修を受ける必要がある
税制改正対応の遅延
TCOの負担増

リリースサイクルが長い <メリット>
継続的な利用ができる
標準保守の範囲で新しい環境に対応、新しい機能が利用できる
SEのスキルが蓄積され、高いレベルのサポートが受けられる

<デメリット>
斬新な機能改良が少ない



8.クラウドとオンプレミス

クラウドサービスで利用する場合と、従来のライセンス購入型(オンプレミス)で利用する場合の違いについては、以下5つの観点を抑えておきましょう。

項目 クラウド型 オンプレミス型
導入期間 短期導入 長期導入
パフォーマンス
(動作の安定性、レスポンスなど)
レスポンス低下
リスクあり
安定稼働
コスト 大規模 高額 低額
小規模 低額 高額
セキュリティ 情報漏洩リスク 自社のセキュリティ方針に準拠
障害リスク ネットワーク障害リスク 安定

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