【ナレッジセンター】
会計システムの見分け方(前編)

2016年3月18日

20160318_02 「どれも機能が横並びで、どこに声をかけたらよいかわからない」
会計システムの選定担当者からよく聞く話です。システム選定には労力と時間がかかりますので、まずは提案依頼先を的確に絞り込むことが、その後のシステム選定を効率よく進める鍵になります。十分な比較の時間が取れず「最終的に価格で決めて、あとで後悔」とならないために、提案依頼先のシステムを絞り込むコツをご紹介します。



1.まずは製品特性から選定対象を絞り込む

選定作業は、各システムの特長を比較し、自社にとってのメリット・デメリットを整理しなくてはなりません。当然、比較対象が多ければ、それだけ選定作業にかける工数も膨らみます。本来の業務と並行して行うことを考えると、あらかじめ選定対象を的確に絞り込んでおき、その後の選定作業にかける時間を十分に確保したいところです。
しかしながら、カタログやWEBサイトだけでは、できることは横並びに見えます。その上、費用感はわかりづらいため、結局やみくもに声をかけてしまうというのが実情ではないでしょうか。
会計システムはたくさんありますが、それぞれ製品特性というものがありますので、まずは、製品特性から選定対象にすべきシステムを絞り込むことができれば、その後のシステム選定作業は効率的に進めることができます。


製品特性を捉える6つの視点

  1. システムレンジによる、価格・機能・導入・利便性の関係
  2. ERPパッケージと業務単体パッケージ
  3. 導入時・稼働後のサポートレベル
  4. リリースサイクル
  5. クラウドとオンプレミス


2.システムレンジとは?

どの会計システムも、企業規模に応じた課題を想定し、開発されています。大きくは、大企業向けレンジ、中堅企業向けレンジ、中小企業向けレンジに分かれ、メーカーはそれぞれのレンジに合わせてシステムを開発しています。


大企業向け ・・・ 年商1000億以上
中堅企業向け ・・・ 年商100億から1000億未満
中小企業向け ・・・ 年商100億未満

一見、同じ導入効果をうたっていても、システムレンジによってその実現方法は根本的に違います。例えば、同じ業務効率化でも、マスタの設定のきめ細かさで実現するのか、操作性で実現するのかによっても、得られる効果は違います。「使ってみたら、期待と違っていた」となるのは、そのためです。各メーカーとも、プロモーション段階では広くアピールをしますので、うたい文句に惑わされることなく、導入事例などを参考に、どのレンジに分類されるのか判断をするのが良いでしょう。


3.システムレンジ別の特性(価格と機能)

価格と機能はシステムレンジの大小に概ね比例します。価格を優先すれば機能が不足したり、機能網羅性を優先すれば高額になります。ただし、価格については、各社によってライセンス費用、導入費用、保守費用の加算ロジックが異なります。一見、安価に見えても、最終的には高額になることがよくありますので、レンジ別の予算感を意識しておきましょう。機能についても、カタログに記載された機能名の有無だけでは正しく判断できません。例えば、同じ管理会計の機能があっても、安価なシステムであれば、管理項目数の制限やシステムの外で行う手作業が前提であったりします。機能の充実度はシステムレンジに比例することを意識しておいた方が良いです。


4.システムレンジ別の特性(導入と利便性の関係)
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システムレンジ別の特性として、導入作業と稼働後の利便性の違いについてご紹介します。
お客様が導入作業で気を付けなければならないのは、自社の負担がどれだけかかるか、それに見合った体制や必要な時間を確保できるかにあります。大企業向けレンジであれば、多機能な分、設定作業は多く、難易度も高くなります。マスタの持ち方など、導入方針をお客様自身で設計しなければならなかったり、高額なコンサルティングサービスが必要だったりします。導入期間が延伸すれば、その分の追加費用も見込んで、投資対効果を評価できるようにしていおくことも重要となります。
逆に中小企業向けレンジであれば、メーカーSEの訪問は数回で済み、安価で短時間の導入が可能です。しかし、残りの設定作業はお客様自身でマニュアルを見ながら行わなければならない場合もあります。

また、稼働後の利便性は、操作性・柔軟性・汎用性・帳票の充実度・データ連携といった観点も抑えておく必要があります。大企業向けレンジの場合、汎用性・柔軟性・データ連携の利便性は上がりますが、反対に操作性や帳票の充実度については、現場向けでないため、「情報システム部門は楽になったが、経理部門の日常業務では、かえって手間が増えた」ということになります。操作が難しければ、属人化のリスクも懸念されます。

中小企業向けレンジはその逆に、現場の使い勝手は改善しても、データ連携の自由度が低いため、システムの外で行う手作業が増えることがあります。


次回は、「ERPと業務単体システム」「導入・稼働後のサポートレベル」「リリースサイクル」「クラウドとオンプレミスの違い」の視点による製品特性の違いをご紹介します。
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