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人事給与パッケージのシステム選定 後編~評価基準に“顧客満足度”はありますか?~

2015年11月16日

人事給与パッケージは他のERPパッケージと比べ、現場部門主体で選定するケースが多いです。しかしながら、人事部門が“IT投資対効果”の観点でシステム選定をするのは難しく、結果的に高額な投資をしたにも関わらず、満足のいかない導入効果に終わるケースは少なくありません。ここでは、人事部門でも正しくパッケージ選定をするためのポイントをご紹介します。



4.企業活動のおける投資対効果(経済性/有効性/効率性)

 経営者によるIT投資の目は厳しくなり、より正確な効果測定を選定者に求める企業が増えています。いかに現場部門にとって使いやすく便利な業務パッケージを選定したとしても、投資に見合う価値があるのか、決裁者である経営者にとっては一番気になります。これは、特に人事給与システムといった効果の評価指標の定量化が難しいバックオフィス系のパッケージ導入でよくあることですが、“高額な投資に見合う効果を上げていないのでは?”という疑念と、“効果が客観的に把握できていない”といった不満からくるものです。

 経済産業省の「システム監査基準」は、情報システムの信頼性、安全性、効率性の向上を図ることを目的に実施するとあります。言い換えると企業活動の中で、そのパッケージが有効に活用され企業活動の付加価値を高めているかが重要ということになります。ここで最低限押さえておかなければならないのは、ハード、ソフト、ネットワークといったシステム構成要素を無駄なく利用できているか、経済性、有効性、効率性の観点がポイントとなります。

 経済性・・・少ない投資で目的、目標を実現しているか
 有効性・・・目的、目標に合致した大きな効果を実現しているか
 効率性・・・目的、目標に対して妥当な投資、方法で効果を実現しているか


 例えば販売管理システムであれば、導入前と導入後で販売管理費率の削減効果を図るなど定量的な評価が可能ですが、人事給与パッケージの場合、バッチ処理時間といった細かい単位の数値でしか表現ができなかったりします。また、オペレーターの人数削減や、保守サービスレベルを下げて維持コストを圧縮するといったインパクトのある効果を目標にすると、結果的に現場担当者の負担を増やし業務品質低下を招くことになります。現実的なレベルで、例えば、人材活用にどう貢献できるのか、中長期的な目標を立て、関連部門や経営者に事前に共有しておくことが重要です。



5.導入実績と6.パッケージベンダーの姿勢

 主に現場部門の現状業務と新しいシステムを比較して、業務が問題なく行えるか、現状の非効率な業務が改善されるかなど、いわゆるFit&Gap分析を行います。現状業務をフローで洗い出し、業務要件を機能要件に置き換えて、RFPにまとめます。気を付けなければならないのは、業務への適合性と網羅性を取り違えずに正しく各要件に対して、優先度をつけることです。

 最近の業務パッケージは各社とも機能が充実しており、提案を受けている段階では各パッケージの違いを見極めることは容易ではありません。プレゼンテーションの上手さや目新しい機能に、判断が影響されることもあります。

 1.から5.までは、パッケージ選定をする為に自社内で十分な準備をしておくことで実現できる評価方法ですが、それでもパッケージ選定を失敗することはあります。これは、評価基準の客観性が不十分であったりする場合におこります。業務適合性やサポートのサービスレベルなど、“実際に使ってみなければわからない”要素が多い為、提案段階で“できる”としていたことが、実際には別にオプションを追加購入しなければならなかったり、稼働時期を大幅に遅らせてカスタマイズをしなくてはならなかったりするケースです。

 そこで、提案段階でも、客観的な評価基準として有効になるのが、パッケージベンダーの姿勢と導入実績です。

 まず、パッケージベンダーの姿勢ですが、チェックポイントとして、担当営業や担当SEで判断するのが一般的です。

・自社パッケージの特徴と製品コンセプトを簡潔に説明できる。
・自社パッケージで「出来ること」と「出来ないこと」をはっきり説明できる。
・打ち合わせた内容を理解し、ドキュメントをベースに意識合わせをする。
・相手にわかる言葉で説明ができる。
・これまでの実績・経験や会社の姿勢・体制を説明できる。
・メールや電話で問い合わせした場合、1日以内で必ず返事が来る。

 他にも、会社としてユーザーとの関わり方について具体的な取り組みがされているかといった点もチェックポイントになります。

 最後に、導入実績については、各ベンダーが公表している導入事例が参考になりますが、事例公開の許諾がとれているかどうかによってその情報量は変わってしまいます。また、社数だけでなく、自社の規模や課題と同じ条件の導入事例を確認する必要もありますので、実際にそのパッケージを使っている企業へユーザー訪問をして、具体的にどんな効果があったのか、どんな苦労があったのかなどを直接確認するのも客観的評価方法として効果的です。ユーザー訪問の結果は、上申時のエビデンスとしてレポートすれば、よりスムーズに選定を進めることもできます。

 効率的に導入実績を確認するのであれば、外部調査機関の満足度調査結果を参考にするのも良いです。ここで注意しなければならないのは、調査方法や調査対象の設定によって、結果は大きく異なる点です。満足度調査には、単純に解答を得られた企業数を分母にして割合を出すものや、推奨度をはかるロイヤルティ調査など様々ですので、調査方法も確認した上で参考にしてください。

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