【法改正情報】職業安定法(2018.1.1施行)

2017年11月22日

2017年3月31日に「雇用保険法等の一部を改正する法律」が国会で成立し、「雇用保険法」、「職業安定法」、「労働保険徴収法」等がまとめて改正されることになったことは以前お伝えしたところですが、今回はその中から、2018年1月1日に施行される「職業安定法」のうち、求人を行う企業に関連する内容についてご紹介します。
今回ご紹介する内容は、求人の際の労働条件の明示についてです。

職業安定法


1.明示項目の追加

求人を行う場合は、求職者に対して、書面の交付等により労働条件を明示しなければなりません。必ず明示すべき項目は、「職業安定法」及び「職業安定法施行規則」により定められていますが、今回の改正により下記の項目(青字)が追加されていますので、自社のWEBサイト等で求人を行う場合は注意が必要です。

・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
・労働契約の期間に関する事項(期間の定めの有無、期間の定めがあるときはその期間)
・試用期間に関する事項(試用期間の有無、試用期間があるときはその期間)
・就業の場所に関する事項
・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項
・賃金(臨時に支払われる賃金、賞与等を除く。)の額に関する事項
・健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項
・労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項
・労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨(派遣の場合)
※試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件

また、「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」(以下、指針)の改正により、労働条件を明示する際の留意点として次の内容が追加されていますので、裁量労働制や固定残業代を採用している場合等は、上記の項目追加と合わせて明示内容の見直しが必要です。
なお、固定残業代については、青少年を対象とするものとしてすでに適用されている「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」の内容と同じです。

・裁量労働制が適用されることとなる場合には、その旨を明示すること。
・固定残業代を採用する場合は、名称のいかんにかかわらず、
 ✔ 固定残業代に係る計算方法
 ✔ 固定残業代を除外した基本給の額
 ✔ 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと
 等を明示すること。
・期間の定めのない労働契約の前に期間の定めのある労働契約を締結しようとする場合は、当該契約が試用期間の性質を有するものであっても、当該試用期間の終了後の従事すべき業務の内容等ではなく、当該試用期間に係る従事すべき業務の内容等を明示すること。



2.求人情報の変更等への対応

求人情報として明示していた労働条件を変更する等した場合は、速やかに、労働契約を締結しようとする求職者にその変更した内容等を明示しなければならないことが、今回の改正により追加されています。明示が必要な場合や明示の方法については次の通りです。

(1)明示が必要な場合

 ✔ 労働条件を削除・追加する等して変更したとき。

例)当初の求人では、「基本給:月25万円、営業手当:月3万円」と示していたが、営業手当がなくなり「基本給:月25万円」のみに変更した。
例)当初の求人では、「基本給:月25万円」と示していたが、営業手当を支払うこととなり、「基本給:月25万円、営業手当:月3万円」に変更した。

 ✔ 一定の範囲を示していた場合で労働条件を特定したとき。

例)当初の求人では、「基本給:月25万円~30万円」と示していたが、「基本給:月28万円」で確定した。
例)当初の求人では、「就業場所はA事業所又はB事業所」としていたが、「就業場所はA事業所」で確定した。

(2)明示の方法

明示の方法は、書面の交付又は電子メールによる必要があります。
また、指針により、当初の内容と変更された後の内容を対照できる書面を交付する方法が望ましいとされていますが、労働条件通知書において変更された事項に下線を引いたり着色したりする方法や脚注を付ける方法も可能であるとされています。


求人で示された労働条件と実際の労働条件が異なる等によりトラブルに発展することがあります。
それらのトラブルを避けるためにも、上記の改正内容を踏まえて法令で求められる事項を求人の際に適切に示すことはもちろんのこと、今回はご紹介していない指針等の内容も踏まえて、求職者に誤解を与えることがないよう配慮して求人情報の提示を行っていきたいものです。



平成29年職業安定法の改正について(厚生労働省)

新旧対照条文(主に平成30年1月1日施行分)

〇 職業安定法

〇 職業安定法施行規則

〇 職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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