育児休業給付金の受給期間が2年に延長/「2018年問題」が目前に到来

2017年2月8日
育児休業給付金の受給期間が2年に延長

厚生労働省は、育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」の支給期間を最大2年まで延長する方針を固めました。(現在は最長1年6ヶ月)
これにより、預け先が見つからず、仕事を辞めざるを得ない保護者を救済し、離職を防ぐのが主な狙いとなっています。
原則「育児休業は1歳まで」というのは今まで通り変わりませんが、保育所に空きがないなどやむを得ない場合の特例を「2歳まで」延ばすとし、2017年10月1日施行を予定しています。ただし、現行と同様、延長する場合には該当要件があります。

それではここで、育児支援が充実していると言われているフィンランドとスウェーデンの育児休業制度を見てみましょう。
まずフィンランドですが、こちらの国は世界で2番目に男女格差が少ない、と言われています。
そのため、育児は男女関係なく行うのが当たり前で、男性も女性と同様に、育児に参加します。また、希望する全ての子どもが保育園の入園できる権利が法律で定められているため、子どもは必ず、近くの幼稚園か保育園に通うことができます。そして、母親は子供が3 歳になるまで産前の職が保証されているため、安心して育児休業を取得する事が出来ます。

一方、スウェーデンでも育児休業を取得する男性が約80%ととても高く、その理由としては、父親のみが取得できる期間(最大3 ヶ月)と、母親のみが取得できる期間が、それぞれ定められており、両親合わせて16 ヶ月の取得が認められているためです。
また子どもが8 歳になるまでの間、分割して取得が可能であり、自由に使うことが出来ます。

元々はスウェーデンも、男性の育児休業取得率は日本と同様、女性の取得率の10%と、とても低かったようですが、法的にこうした「仕組み作り」をしたことによって、取得率が飛躍的に伸びたようです。

男性の育児休業の取得率が2%以下の日本も、今後、男性の育児参加を促す対策を進めるようですが、フィンランドやスウェーデンのように、父親が育児休業を取らないと損をする仕組みを作ることも大切かもしれませんね。

※もう一つの改正※
育児休業給付金が2017年1月1日より被保険者が希望すれば毎月申請することが可能となりました。


「2018年問題」が目前に到来

2013年4月1日に改正労働契約法が成立しました。この日を起点に、有期雇用契約が5 年を経過した人に無期雇用に転換する権利が付与されます。パートやアルバイトなどの短時間勤務の非正社員であっても、5年勤務すれば契約期間のない雇用契約を結ぶことができるようになります。
法改正から5年後は2018年4月ですが、対応の検討が急務となります。

この法律の大きな改正点、下記の3 点を再度確認してみましょう。

Ⅰ「無期労働契約への転換」
無期労働契約への転換は「通算して5年を超えて反復更新」されたときに、労働者の申し込みがあることにより行われます。
ただし契約がない期間が6か月以上あるとき、或いは、1年未満の有期労働契約の場合、その2分の1以上の空白期間があれば、それ以前の有期労働契約は通算契約期間に含めないということなっています(これをクーリングといいます)。

Ⅱ「「雇止め法理」の法定化」
従来、最高裁判例によって、一定の場合に使用者の「雇止め」を無効とする「雇止め法理」が確立していましたが、今回の改正では、判例上確立していた雇止め法理の内容や適用範囲が、変更されることなく、労働契約法に条文化されました。

Ⅲ「不合理な労働条件の禁止」
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するもので、賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生(通勤手当、食堂の利用、安全管理)など、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
この規定により不合理とされた労働条件の定めは無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められる可能性もあります。

この法改正で、誤解を招いている注意点があります。

・労働者からの申し込みによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるという内容であり、「正社員」にしなければならないというわけではありません。
また、有期契約から無期契約に転換した社員に対して、給与を上げる義務も、正社員につけている手当をつける義務も会社にはありません。なぜなら、5年雇った契約社員と無期契約を結んだ時点で会社は義務を果たしているからです。

現在の日本で、役員を除く全雇用者数5385 万人の内、37.6%(2025 万人)が非正社員として働いています(総務省統計局)。

有期雇用の無期化は企業にとって固定費の増大につながるため、無制限に無期化することは非現実的です。また、働く側の要望は様々であり、年齢や家庭の事情などによって無期雇用よりも有期雇用を望む場合もあります。
今後は、将来のキャリアプランについて本人の意思確認も十分に行ったうえで、会社側の期待像を明確に伝え、労働契約をめぐる誤解やトラブルを防いでいくようなコミュニケーションがますます重要になってきそうです。





執筆陣紹介

SATO社会保険労務士法人
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