不正のメカニズムと対策

2015年10月7日

 近年、上場企業の粉飾決算や従業員による多額の横領、個人情報の漏えいが大きなニュースとして報道されています。 事件が起こるたびに当事者は厳しく法的、社会的制裁を受けるにもかかわらず、企業の不祥事や従業員の不正は後を絶ちません。

 今回は、不正が発生する仕組みとして有名な「不正のトライアングル」という理論をご紹介し、不正対策について考えます。 「不正のトライアングル」(不正の要因) 1950年代にアメリカの組織犯罪研究者ドナルド・R・クレッシーが体系化した理論で、以下の「3つの条件」が全て揃うと不正が発生するという説です。 ① 不正を行うための『動機・プレッシャー』があること ② 不正を行うことができる『機会』があること ③ 不正を行うことが本人にとって『正当化』されること。
1.不正の『動機・プレッシャー』

 「今の収入ではローンが払えない」、「高い業績目標を課せられ自分では達成できない」といった解決困難な経済的事由を個人で解決しようとする場合に、不正を行う心理的なきっかけ、つまり不正の『動機』が生じます。従って、個人で問題を抱え込まずに上司や同僚に相談できる環境があれば『動機』の発生を抑えることは可能と言えます。

2.不正の『機会』

 「現金出納のチェック機能が甘い」、「集計作業が膨大且つ複雑で全体を詳細に把握している者がいない」といった内部統制機能の形骸化は「悪いことをしてもばれないだろう」という不正を犯す『機会』の認識を生んでしまいます。

3.不正の『正当化』

 人事制度は以下の3つの制度によって構成されています。 「自分だけが悪い訳ではない、皆やっている」、「自分は悪くない、悪いのは会社」といった、(不正を抑止する)良心の呵責を振り切るための自分自身に対する理由付けが不正の『正当化』です。 つまり、正当化する理屈を作って不正を行うので、このような自己中心的な姿勢を排除することが必要です。

不正の『機会』を無くすための「内部統制」は有効な取組みである一方、「完全な不正排除の仕組み」は存在しません。 従って、『動機・プレッシャー』、『正当化』といった「個人の内面に潜む不正の要因」に着目した取組みも重要です。 特に、大きな組織を持たない中小企業の不正対策としては、「社内コミュニケーション」を充実させ、社内教育により「倫理観」を高めることの効果は高いものと思われます。

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