上場会社等における会計不正の動向(2025年版)
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「上場会社等における会計不正の動向(2025年版)」です。
内容
上場会社等における会計不正の動向(2025年版)
1. はじめに
日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、2025年7月23日付けで経営研究調査会研究資料第12号「上場会社等における会計不正の動向(2025年版) 」を公表しました。
本研究資料は、近年の会計不正の動向を適時にお知らせするため、上場会社及びその関係会社が公表した会計不正を集計し、取りまとめたものです。
同協会は、2018年6月26日付けの同5号「上場会社等における会計不正の動向」を初めて公表して以来、継続的に改訂を行っており、今回の2025年版は、2024年7月16日付けで公表した同11号「上場会社等における会計不正の動向(2024年版)」に続く更新版となります。
2. 会計不正の公表会社数
2021年3月期から2025年3月期において、会計不正の発覚の事実を公表した上場会社等は、計196社でした。「2025年3月期」は、56社が会計不正の事実を公表し、そのうち2025年4月16日現在で42社が調査報告書を公表しています。また、会計不正の公表会社数は「2021年3月期」に26社だったところ、「2022年3月期」は33社、「2023年3月期」は36社、「2024年3月期」は45社、「2025年3月期」は56社と、年々増加しています。
3. 会計不正の類型と手口
2021年3月期から2025年3月期において、調査報告書が公表されている177社で生じた会計不正(184件)のうち、不正の手口が判明するものを分類すると、下図のとおりとなります。
4. 会計不正の主要な業種内訳
2021年3月期から2025年3月期において、会計不正の発覚の事実を公表した上場会社等196社の会計不正のうち、会計不正が行われた事業が判明しているものを業種別に分類したものが、下図になります。これは、会計不正の事実を公表した上場会社等が分類される業種ではなく、会計不正が行われた事業を基に分類をしています。過去5年間において、業種別では、「サービス業」が46社(構成比23.5%)で最多であり、次いで「卸売業」が27社(同13.8%)、「建設業」が21社(同10.7%)、「情報・通信業」が20社(同10.2%)、「電気機器」及び「小売業」がそれぞれ11社(同5.6%)でした。
5. 会計不正の発覚経路
2021年3月期から2025年3月期において、調査報告書が公表されている177社で生じた会計不正(184件)のうち、不正の発覚経路が判明するものを分類したものが、下図になります。1位「当局の調査等」、2位「内部統制等」、3位「内部通報」であり、昨年度の報告と同様の傾向となっています。
6. 会計不正の関与者
2021年3月期から2025年3月期において、調査報告書が公表されている177社で生じた会計不正(184件)のうち、不正の主体的関与者が判明するものを役職に応じて分類したものが、下図になります。2025年3月期は、2024年3月期との比較において、「管理職」の割合が減り、「役員」・「非管理職」の関与件数が増加しています。
7. まとめ
テクノロジーの進展により不正手口も高度化しています。形式的な対応ではなく、実効性ある対応を行うためにも各社、このような調査結果を参考にすることが有用と考えられます。
執筆陣紹介
- 仰星監査法人
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仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
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