収益認識基準に関する会計と税務の異同点について

2018年10月10日
収益認識基準に関する会計

平成30年3月30日に企業会計基準委員会より、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準(以下、「収益認識基準」とします。)」等が公表され、遅くとも2021年4月1日以後開始事業年度から新しい基準で収益を認識する会計実務がスタートします。法人税法でもこれを踏まえ、法人税法第22条の2を創設し、法人税基本通達も改正しています。
そこで今回は、収益認識基準に関する会計上と税務上の処理の異同点について説明します。なお、ここでの「税務上」は、法人税計算における処理を対象に記述しています。

(1)税務上の基本スタンス

平成30年5月に国税庁から公表された『「収益認識に関する会計基準」への対応について~法人税関係~』では、法人税基本通達の対応の整備方針について次のように掲げられており、基本的には会計上の処理を税務上も容認するスタンスがとられています。

  • 新会計基準は収益の認識に関する包括的な会計基準である。履行義務の充足により収益を認識するという考え方は、法人税法上の実現主義又は権利確定主義の考え方と齟齬をきたすものではない。そのため、 改正通達には、原則としてその新会計基準の考え方を取り込んでいく
  • 一方で、新会計基準について、過度に保守的な取扱いや、恣意的な見積りが行われる場合には、公平な所得計算の観点から問題があるため、 税独自の取扱いを定める。
  • 中小企業については、引き続き従前の企業会計原則等に則った会計処理も認められることから、従前の取扱いによることも可能とする。

(2)収益の計上時期の会計・税務の相違点

会計上は、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識しますが、税務上も基本的に同様の処理となります。そのため、収益の計上時期について基本的には会計と税務で相違はありません。
なお、収益認識基準に対応し、法人税法第22条の2の第1項で目的物の引渡日又は役務提供日に税務上、収益認識するという大原則が掲げられ、基本通達2-1-21の2~6で履行義務の充足に関する規定が制定されています。

(3)収益の計上額の会計・税務の相違点

会計上は、収益の計上額は財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を基礎とし、例えば貸倒れや返品が見込まれるのであれば、貸し倒れると見積られる金額や返品されると見積られる金額を控除した純額で収益として計上することとなります。

例: (借)売掛金 100 / (貸)売上高 95
(貸)貸倒引当金 5

一方、税務上は、収益の額はいわゆる時価であるとされ(法人税法第22条の2の第4項)、貸倒れや返品の可能性があったとしても、これらを考慮しないで収益の計上額を算定するとされています(同第5項)。
そのため、貸倒れや返品の見積額を控除して会計上で収益計上している場合には、会計と税務で処理に相違が生じることとなります。

貸倒れや返品に関する論点は、変動対価として整理されますが、すべての変動対価に関する会計処理が税務上否定されているわけではなく、値引き・割戻し等については、以下の3つ要件を満たした場合には収益の額から減額する取扱いが新設されています。

(※)値引き・割戻し等に関する3要件の概要(詳細は基本通達2-1-1の11参照)

  1. ①値引き等の事実の内容、②値引き等の金額又は算定基準が、契約又は取引慣行もしくは公表した指針等で相手方に明らかにされている 又は 当該事業年度終了日において内部的に決定されている
  2. 値引き等の見積額が過去実績等の合理的な方法により計算されている、かつ、当該方法が継続して適用されている
  3. 1.を明らかにする書類及び2.の算定根拠書類が保存されている

このように、基本的には会計上の処理を税務上も容認するスタンスとされているものの、税法側で別途収益の計上額の計算方法が定められているものや一定の要件を満たさなければ会計上の処理を容認しないといった税独自の取扱いを定めているものもあります。

なお、ここでは変動対価を例に会計と税務の相違点を記述していますが、実際の会計と税務の相違点は変動対価だけではありませんので、ご留意ください。

執筆陣紹介

仰星監査法人

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