「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版の公表について
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【5分で納得コラム】
今回は「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版の公表について解説します。「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版の公表について
1. はじめに
金融庁は、2025年3月24日に「記述情報の開示の好事例集2024」の最終版を公表しました。
金融庁では、開示の充実化に向けた実務の積上げ・浸透を図る取組として、2018年から毎年、「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」(以下「勉強会」)を実施した上で、「記述情報の開示の好事例集」を公表、更新してきました。
今回の最終版では、「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み」が追加され、「経営上の重要な契約等」、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析(MD&A)」に関する開示例及び中堅中小上場企業の開示例が追加されました。
今回は、「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み」の追加された取組の内容をご紹介します。2. 「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み」の追加された取組み内容
金融庁では、どのような開示が投資判断にとって有益と考えられるのかについて、投資家・アナリスト・有識者及び企業の皆様による勉強会を開催し、議論した結果、最終版において、下表の黄色でハイライトした取組みが追加されました。
主な追加内容として、企業価値向上のために必要な開示が何かという明確なポリシーを持って開示をすること及びその企業の開示書類間の情報に一貫性があることが重要であるという考えが示されました。また、必要に応じて記載事項を絞ったメリハリのある開示とすることや投資家と対話を行うことにより得られた新たな視点や発見を踏まえて開示をブラッシュアップしていく姿勢が開示の進展において重要であるという考えが示されました。最終版で追加された内容 投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み ・ 海外の情報開示姿勢に変化があったとしても、政策と情報開示は別であり開示しなくてはいけない内容に変化はないため、企業価値向上のために必要な開示が何かという明確なポリシーを持って開示をすることが重要 ・サステナビリティ情報をはじめ重要な情報は有価証券報告書でも開示することが求められるようになってきている。また、上場企業であれば求められる開示の水準に大きな違いはないため、開示に十分なリソースを割くことができない場合には、まず有価証券報告書の開示に集中することが有用 ・開示検討の初期段階からCEOやCFO、経理部等が連携し、開示に関する取組みを推進することが充実した開示を行うにあたり重要 ・開示を充実化させるためには、開示担当部門と関連部門の連携が重要になるため、関係部門間の連携を強化する取組みが重要 ・開示書類や開示タイミングが異なっていても、開示書類間の情報に一貫性があることが重要であり、一貫性がない場合には記載されている施策等の信頼性に疑念が生じることもある ・開示を充実化させようとすると、記載事項や内容が増える傾向にあるが、経営上の重要性や投資判断上の重要性等を踏まえ、必要に応じて記載事項を絞ったメリハリのある開示とすることが重要 ・まずは開示をしてみることが重要であり、投資家と対話を行うことにより得られた新たな視点や発見を踏まえて開示をブラッシュアップしていく姿勢が開示の進展においては重要 ・開示のために新しいことを始めるのではなく、現在の取り組みの中で投資家に伝えたいことや、経営管理に使用している一部の指標等をわかりやすく整理して開示することが、対話のきっかけになるため重要 ・投資判断においては、キャッシュ・フローが増えるか、割引率が下がるのか、競合との競争に勝つこと ができるのかといった視点で開示を見ているため、これらと因果関係のない情報は投資判断に影響を与えておらず、また、開示の質が悪いと、リスクプレミアムが上昇し、企業価値のディスカウント要因ともなり得る ・開示に前向きな企業であることを示す方策としては、開示タイミングの見直しを行い、有価証券報告書を株主総会前に開示することも有用 ・海外投資家向けに、日本語だけではなく、英語での情報発信も行うことが重要 ・一覧表を使用する場合、画像形式で掲載するとテキストとして取込み分析することができないため、画像ではなくテキストで記載することが有用
執筆陣紹介
- 仰星コンサルティング株式会社
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仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。